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街・遺跡詳細

公都ダーレスブルグ

 約4万人の人々が暮らすダーレスブルグ公国の首都です。
 テラスティア大陸の最北端の都市であり、北部のレーゼルドーン大陸とテラスティア大陸とを繋ぐ橋を塞ぐように広がる城塞都市となっています。当然、ルキスラ帝国へと繋がる南側も市壁に囲まれており、国内に広く布教している騎士神ザイアの教えに適った専守防衛の為の都市と言えます。

防衛区

 外敵に備えるための特徴としてまず挙げられるのは、街を囲むように北部と南部に存在している「防衛区」でしょう。

 ダーレスブルグは国教こそ定めてはいないものの、騎士神ザイアの教えが最も国民たちに浸透しており、次いで始祖神ライフォスと太陽神ティダンの信仰が盛んです。防衛区は、それらの神殿が多く集まると同時に、ダーレスブルグ軍の駐屯地となっており、訓練施設も周辺にいくつか建設されています。ダーレスブルグの主な兵力は、やはり騎士神の神官戦士団です(とはいえ、神聖魔法を扱える者のみを神官戦士と呼ぶならば、その数は激減してしまいますが)。軍に所属する過半数の者が騎士神ザイアを信仰しており、その教義に従って公民たちの盾となることを誉れとして日々激しい訓練に身を置いています。

 都市を囲むように神殿が点在しており、ひとつの宗派の神殿でさえ複数の建物が存在しますが決して統率が取れていない訳でなく、それぞれの神殿が巧みに連携して都市の防衛に当たります。それらの神殿を統括しているのが、ジェラルド・ヘリオドールという人間の男性です。
 彼は若き頃から頭角を現し立て続けに功績を立て、5年前の《蒼き北伐》の後にザイア神殿長およびダーレスブルグ総合神殿長に任命されました。彼はダーレスブルグの開放問題については中立の姿勢を保っており、ただひたすらに騎士神の使徒としての役目を全うすることを善しとしています。当然彼自身にも意見はあるのでしょうが、自分の立場と責任から、それを他言するような人物ではありません。尤も、その姿勢は「保守派」や「開放派」の一部からは臆病者と非難されたりもするのですが……。

商業区

 防衛区の内側に存在するのが、「商業区」です。日用品から装備品まで、国外からも取り寄せられる様々な商品が並べられる無数の店が立ち並び、ダーレスブルグ公都を彩っています。一口に商業区といってもその幅は広く、複数の通りを利用した露天市場が展開されている場所もあれば、高級な店舗が立ち並ぶ貴族御用達の一角もあります。また、歓楽街もこの商業区内に収められており、国民たちの大半は、休日この商業区を必ずと言っていい頻度で訪れ、ショッピングやカジノなどの娯楽で日々の疲れを癒します。

 それだけ多くの人間が出入りする広い区画ですから、猥雑な雰囲気を持ってしまうのは避けられません。いかに騎士神信仰が盛んといっても、行き過ぎた娯楽や犯罪者たちをすべてを取り締まることは難しく、公都の中では一番治安の不安定な場所となってしまっています。とはいえ、人気の多い明るい通りならばそのような治安の悪さは感じられず、有名店や人気店が立ち並ぶ目抜き通りは老若男女問わず安心して楽しむことが出来るでしょう。

市街区

 その商業区のひとつ内側に広がるのが「市街区」となっています。公国民の大半が暮らす場所であり、面積もすべての区画の中で最も広いものとなっています。

 市街区の最大の特徴となるのは、市街区と商業区、つまり外側とを隔てるように聳える《市街壁》でしょう。都市の周囲を覆う市壁とは別に建てられたこの市街壁は、防衛区と同様ダーレスブルグという都市国家を象徴するものと言えます。20年程前、レーゼルドーンへ至る橋を開放するとほぼ同時期に、国民の安全を確保する為に公王アルフレートⅢ世が提唱し、建設が開始され、現在では市街の全てを囲うように存在しています。商業区へと至る門は、商業区の店の多くが閉店する時間にその殆どが閉ざされ、翌日の日の出と同時に開放されます。

 市街区は「旧市街」と「新市街」に分かれ、後述の「行政区」と「上流階級区」、そして「公城区」を挟んで旧市街が南、新市街が北に展開しています。
 旧市街は古い街並みが中心で、比較的昔からダーレスブルグに住んでいる人々が暮らしています。とはいえ、ダーレスブルグは《大破局》の折に首都を蛮族軍に奪われ、破壊の限りを尽くされている為に魔動機文明を思わせるような建造物はほぼありません。これは旧市街だけでなく、ダーレスブルグ公都全体に言えることです。
 新市街は言葉通り旧市街に比べ新しい建物が立ち並びます。開放政策によって土地を取り戻すと同時に人も取り戻し、そのいくらかは当然都市にも流入し、それらの移住者たちを受け入れるのが、この新市街です。勿論古くからの公国民も多数存在していますが、現在では移住に伴う人口が比率を爆発的に増加させ、新市街の中心は移住者たちになりつつあります。

 そんな経緯が存在する為、新市街には「開放派」に属する人間が多く、逆に旧市街には「保守派」が多いという状況になっています。それぞれの市街区では各々の派閥による街頭演説などが頻繁に行われており、日によっては商業区にも負けない程の熱気に包まれます。それがエスカレートして大小の諍いに発展することもままあるのが、治安維持に関わる官憲や神官戦士団や公国軍の悩みの種となっています(尤も、それらの組織に属する人間が事を起こしている場合もあるのですが)。

 また、商業区や防衛区程ではないにせよ、市街区にも生活に不自由のないだけの商店や一般市民の為の神殿があり、またダーレスブルグの冒険者の店の殆どは市街区に存在しています。確かにダーレスブルグの神官戦士団や軍は訓練や演習に余念がない優秀な機関ですが、国外へ手を広げようとしている今、彼らだけではとてもすべてをカバーし切ることはできません。その為、内部にある市街区に冒険者の店を多数置き、有事の際には冒険者たちに協力して市民の安全を確保するといった対策が取られているのです。
 旧市街には古くからこの街を見守ってきた老舗の冒険者の店が、新市街には開拓に伴ってさらに増加した冒険者を受け入れる為の新設の店の多くが、といった具合です。PCたちが所属する〈宵の明星亭〉も若く、新進気鋭の冒険者の店であり、新市街に店舗を構えています。

上流階級区

 格調高い貴族たちの住宅が立ち並ぶ高級住宅街、それが「上流階級区」です。  市街区と壁で隔たれているようなことはないものの、出入りには制限が掛けられ、一般市民は自由に出入りすることは出来ません。ただし、市街区から公城区まで1本のみ真っ直ぐに立派な石畳の道が敷かれており、その道だけは通行の制限はされておらず、市街区住民は比較的容易に公城区や行政区に進入することが可能です。この道は公城を中心として都市の中心を南北に縦貫していることから、《中枢道》の名が付けられています。

 その中枢道を少しでも外れれば、そこから先は別世界が広がります。様々な趣向を凝らした、多額のガメルの掛けられた屋敷や邸宅が並び、外縁部の喧騒とは打って変わって閑静な住宅街となっています。ガメルの掛かった住宅が立ち並ぶといっても、それらは決して下品ではなく、この国らしい質実剛健な気風がよく表れています。  街中には警備兵の姿も見られますが、その数は商業区や市街区の方が多いと言えるに留まります。ダーレスブルグの貴族は、市民たちの上に立つ者として彼らを守る為に在るという意識が強く根付いており、それが貴族たちの誇りとなっています。保守派と開放派の対立は、「守る為の姿勢」の違いが強く表面化してしまった事例と言えるでしょう。どちらも尊い思い故に、解決が非常に難しくなってしまっているのです。

 またルキスラ帝国大使館が位置しているのも、上流階級区北部、新市街との境目近くです。  帝国大使館では、駐在大使であるバッカス・ブルフォードを中心にルキスラ帝国との連絡のやりとり、国際親善の為の政策提案・催しなどを行っています。彼は帝国の貴族でありながら、随分と庶民派で目線が市民たちに近く、一般市民たちからは慕われています。しかし、バッカス自身は保守派寄りの思想を持っており、開放派の多い新市街に近いことでの問題もあるようです。尤もそれらは些事に過ぎず、思想の違いを補ってあまりある人格から、市民たちが親しみを持っているのは疑いようがありません。  一方で、貴族たちからの評判はと言えば、綺麗に二分されます。言うまでもなく「保守派」と「開放派」であり、保守派からは「侵略を得意とするルキスラ帝国の貴族でありながら、話の分かる人間だ」と、開放派からは「帝国貴族でありながら時勢を読めぬうつけ者だ」と評されています。

行政区

 ダーレスブルグの政治の中心を司るのが「行政区」です。公城を囲むように軍務省や文化教育省を始め、多数の官庁が存在しています。
 此処も上流階級区と同じく、中心を中枢道が縦貫しており、中枢道への立ち入りは一般市民も自由に可能ですが、それ以外の区域には一般人の立ち入りは基本的に禁じられています。

 ダーレスブルグは王を戴いており、最終的な決定権は概ね公王にありますが、帝国や王国といった専制君主制に比べて議会の権限が強く、憲法や法律によって王の権限の一部が制限された制限君主制を採っています。尤も、別の項でも記している通り、現公王アルフレートⅢ世は痩せ細り、無気力な人物となってしまっている為に国家元首としての役割をまともに果たせておらず、実質は議会制となってしまっています。
 そのような状況ですから、《ネベール会戦》後からはこの行政区――特に公国大議会場の周辺です――は常に激しい議論が交わされる場となっており、日夜多数の貴族・議員たちが書類や他派閥の主張と格闘しています。

公城区

 公都の最も中心に当たる部分、それがこの公城区です。
 歴代の公爵及びその親族、またはそれに連なる上位貴族たちのみが暮らす区域であり、公都の中で最も静寂で穏やかな空気に包まれている区画となっています。
 公城区の中央に位置するのがダーレスブルグ公王の城、通称《騎士公城》です。公爵という騎士よりも遥かに高い立場にありながら、騎士としての心意気を忘れぬようにと、《大破局》の後に建造された際に付けられた名で、それが現代まで引き継がれています。その間、幾度と無く改修こそされているものの、基本的な外観は変わらず、質素でありながらも堅牢で、ダーレスブルグを守る要衝に相応しい造りとなっています。

中継塔《デュークダム・ピラー》

 公都の中継塔は、新市街の端、公城区へと伸びる中枢道の手前に建てられています。都市の景観を損なわぬよう、細心の注意を払って設計されており、街の雰囲気に合わせた造りであると共に巨大時計も備えられており、市民たちの待ち合わせなどにも使われるなど、公都の新たなランドマークとしての役割も果たしています。
《デュークダム・ピラー》は高さ地上50m程の尖塔であり、その頂上部で魔動波の受信及び送信を行います。骨格が剥き出しになっているような見た目ではなく、きちんと壁に覆われた建物であり、5階(地上25m)までは一般市民の見学も許可されています。6階以降は魔動機の仕掛けで埋め尽くされた精密で繊細な場所となっており、管理担当者など以外の立ち入りは基本的に禁じられています。

帝都ルキスラ

 ルキスラ帝国は、“ザルツの要塞”の異名を取る、ザルツ地方中央部に位置する国家です。
 その勢力はザルツ地方最大であり、大小合わせ複数の城塞都市をその支配下に収めています。
 その中でも帝都ルキスラは現在知られているテラスティア大陸の年の中でも最大規模を誇っており、政治、軍事だけでなく交易の要衝としても知られています。その人口は約8万人とされ、今もなお増加傾向にあります。
 そのルキスラ帝国を収める若き皇帝ユリウス・クラウゼの手腕は、NPC紹介でも記した通りです。ここでは、そのユリウスの収める広大な帝国の首都について紹介していきます。

 まずは地理。
 帝都ルキスラが位置するのは、ザルツ地方のほぼ中心。北へと流れるローラ河に沿うように市街は広がり、丘陵地を中心に皇城、行政区、上流階級街が存在しています。
 周辺は穀倉地帯になっており、大都市が抱える膨大な人口を養っています。ですが増え続ける人口に対応するには不足しがちで、以前より南方の自由都市同盟から輸入を続けています。
 気候は温暖で、1年を通して雪が降ることはまずありません。夏は長く、冬は短めで、夏場の気温はかなり高くなります。しかしながら、豊富な水量を誇るローラ河と潤沢な地下水のおかげで水不足に陥ることは殆どありません。それが、ルキスラの発展を支える原動力となっています。

 北にバーレス、西にアルドレア、南にティザという城塞都市を持ち、これらは周辺国は蛮族軍に対するルキスラへの防備となっています。こうした代表的な城塞都市の他にも帝国領地内には大小の町や村が存在し、帝国の税制を支えています。
 また、ルキスラはザルツ地方の経済の中心地でもあります。西のフェンディル王国や北のダーレスブルグ公国はルキスラ抜きに交易することは非常に困難で、南方の自由都市同盟も、ルキスラへの食料輸出が無ければ財政が成り立たない状況です。

 帝都ルキスラの人口は約8万人。
 商人、職人、農業従事者、肉体労働者などがほどよいバランスで居住しています。
 ただし、農業従事者の大半は帝都の外に村落を構え、割り当てられた農地ごとに居住しています。こうした者たちの数は帝都の人口に数えられておらず、これらを合わせれば軽く10万人を超える人口となるでしょう。

 帝都周辺の農地は、皇帝直轄領として太守が派遣されており、複数の村落が管理運営されています。帝都から離れるにつれ、貴族の管理する荘園領地となり、一定の税を納める以外は個々の領主の裁量に任されていた――のも今は昔、《蒼銀戦役》以後、クーデリア侯爵の自治から、貴族の自治に不満を覚えた皇帝は今では殆どの貴族から自治権を奪い、可能な限り皇帝の目が行き届くようにしています。
 一見無謀にも見えますが、ルキスラ、フェンディル、ダーレスブルグの三国による対蛮族同盟が存在する以上、蛮族と癒着していたクーデリア侯爵の行いは帝国として看過し得ないものであり、同盟主としての権威を維持する為にはそれが必要だったのです。

 とはいえ、流石に直接皇帝が現地に赴いて見るのは不可能。そこで役立つのが、魔動技術です。
 通信機を始め、一般には伝わっていないものの、ルキスラ帝国は映像をやり取り出来る装置まで復元・開発を完了しており、それらを有効に利用しつつ、また派遣する太守の選抜も慎重に行い、それぞれの領地を管理させています。

 以下は、帝都に存在する重要施設の紹介です。

皇城

 帝都の中央にそびえる城が「皇城」です。
 丘の頂上に存在し、ルキスラ市街は勿論、遠く帝国領内を見渡すことができます。
 皇城は皇帝の居所でもあり、また政治の中枢でもあります。そのため防備や警備は厳重であり、滅多なことでは入り込むことは叶わないでしょう。
 一方で抜け道や隠し通路、地下への脱出路や小型の飛空船発着場など、人知れず出入する手段は複数存在しています。事情を知る者ならば、忍びこむことも不可能ではないのかもしれません。

飛行船発着場

 皇城のすぐ南側に、大型飛空船を収容出来る大規模な「飛空船発着場」があります。
 飛空船は《大破局》によって失われた技術の中でも最高峰に位置するものであり、存在そのものが貴重です。飛空船の弱点は着陸しているときであるため、発着場の警戒レベルは皇城に勝るとも劣らないものとなっています。
 またこの発着場の収容能力は大型船1、中型船4となっていると言われていましたが、現在ではその数は増し、大型船3、中型船7程度の規模にはなっているのではないかと噂されています。加えて、この発着場が使えない状況の為に、ローラ河への着水が考えられており、仮設発着場を素早く設置出来る準備も整えられています。

行政区

 皇城を取り巻くように存在しているのが、「行政区」です。
 ここでは日夜、役人たちが帝国の様々な問題を解決するべく知恵を絞り、書類と格闘しています。
 軍務省や財務省などの官庁も此処に存在しています。一般人の立ち入りは基本的に禁止されており、平時は静寂に包まれた場所となっています。

上流階級街

 丘の中腹に当たる場所は、主に貴族が暮らす「上流階級街」となっています。
 旧市壁(街の外壁)の内側に当たり、《大破局》以後、帝国隆盛の礎となった人々たちが暮らす街となったのが始まりです。いまなお旧市壁は高く聳え、この壁の内側に入る際には門番のチェックを受ける必要があります。同時に街角には多くの警備兵の姿も見られ、治安はルキスラ市街の中でももっともよい場所となっています。反面、一般の人間には縁遠い場所とも言えるでしょう。

旧市街

 最初にルキスラ市街の規模拡張が行われた際に造られた市壁があり、その中の一帯を「旧市街」と呼んでいます。
 上流階級街のように出入りが規制されたりはしませんが、古い街並みが中心であり、生粋のルキスラ人が暮らす街並みとなっています。
 ライフォス神殿やサカロス神殿、マギテック協会などが存在し、老舗の冒険者の店や伝統ある酒場なども見られます。もてなし好きで郷土愛や愛国心に厚い、昔気質な人々が多く暮らしており、総じて治安もよい区画です。

皇城前広場

 旧市壁と堀に囲まれ、目抜き通りと西門へ抜ける通りが交差する場所に存在するのが、「皇城前広場」です。
 ここは国家の重大発表を行う際や、市民の皇帝謁見が催される帝国最大の広場であり、もっとも賑やかな場所でもあります。
 平時には行商人の露店や大道芸人が集まり、それを目当てとした人々も多く集まります。交易路の交差点に当たる場所であるため、交易商人や旅人、冒険者の姿も数多く見られます。当然警備も厳重ですが、スリや置き引きの被害が絶えないことでも知られています。

マギテック協会

 工場前広場から堀を挟んだ反対側に存在する、白く四角い建物が「マギテック協会」です。
 ルキスラのマギテック協会は、西の隣国フェンディル王国の魔動機院と並ぶ魔動機術の殿堂です。
 地上8階、地下3階の巨大な建物内には、魔動機術を研究する研究室から、書庫、資料保管庫、実験室、若き魔動機師を育てる教室まで、ひと通りのものが揃っています。ですがやはり、ここでもっとも重要視されているのは、発掘された未知の魔動機を研究分析し、実用技術として復活させることです。そのため、マギテック協会本部で勉学に励むのは一部のエリートであり、大半の一般生徒は周辺に存在する学舎で、より平易な魔動機術の勉強をしています。

新市街

 現在の帝都の、半分近くの面積を占めるのが「新市街」です。
 新たな市壁(外壁)が造られ始めたのは、約100年前。以来、増えすぎた人口はこの新市街にも住居を求め、また外から流れて来た多くの異国人も住み着いているため、猥雑な雰囲気の強い区画となっています。
 北門から南門へ抜ける目抜き通り、及びフェンディル王国へ向かう西門の大通り周辺は、数多くの商店が軒を並べています。宿や酒場も多く、衣類から食糧品、武具や馬具に金物細工物、なんでも揃えることができるでしょう。他の町では考えられない活気に満ち溢れており、来訪者はまずその活気に圧倒されると言います。

 しかし目抜き通り周辺は別として、総じて新市街の治安は不安定であり、東側は特に猥雑な裏町となっています。住民の貧富の差も激しく、いまにも潰れそうな長屋の横に、立派な屋敷が建っていることも珍しくありません。
 職人や鍛冶屋などの工房も多く、北門や南門、西門近くは新興の冒険者の店も数多くが軒を並べています。ブロックごとで雰囲気ががらりと変わる、良くも悪くもいまもルキスラを象徴する街並みとなっています。

遺跡区

 新市街の南西部に、遺跡区は存在します。
 ここは《大破局》以前のルキスラ市街地にあたり、倒壊した当時の建造物が、いまだ手付かずのまま放置されています。魔動機文明時代の建造物は造りが強固であり、解体撤去するだけでも大変な労力と費用がかかるから、というのがその理由です。
 加えて、この地域から地下遺跡へと入るための入り口が多数見つかっていることも理由のひとつです。

 そういった状況でしたが、ユリウスの治世になってから、遺跡区及び地下大遺跡の調査は幾度となく大々的に行われ、地下に残っていた蛮族の残党やアンデッド、暴走魔動機などはほぼすべて駆逐されました。また、建造物の解体撤去も積極的に行われ、遺跡区の一部は広場として市民たちに開放され、憩いの場としての機能を果たしています。
 地下大遺跡の詳細は後述の項目を参考にしてください。

冒険者の店

 冒険者が数多く集まる大都市として、帝都には数多くの冒険者の店が存在しています。その数は百店舗を超えるとさえ言われています。
 冒険者の店の多くは、北門、南門、西門の近く、目抜き通りから少し奥まった場所に多く存在します。特に西門近くの遺跡区周辺や、南門周辺には有力な冒険者の店が集中しています。

 ルキスラ帝国内の冒険者の店は、古くから皇帝の庇護を受けており、税制の優遇や魔動機文明の遺物を高額で買い取ってもらえるなど、多くのメリットがあります。ですが実績の芳しくない店は免許を取り上げられるため、どこの店でも将来有望そうな若き冒険者や、実績のある有力な冒険者は引く手数多です。

 ルキスラでも有名な冒険者としてバジリスク殺しで知られる元冒険者が経営する〈蒼き雷の剣亭〉があります。この店は、《黄金戦役》の終息に一役買った冒険者たちが所属している、あるいはしていた店でもあり、現在も数多くの新人たちがそのネームバリューにあやかろうと登録を求めてやってきます。

各種神殿

 帝都ルキスラは、その規模に比例するように数多くの神殿も存在しています。  主に知られているだけでも、始祖神ライフォス、騎士神ザイア、太陽神ティダン、月神シーン、慈雨神フェトル、賢神キルヒア、炎武帝グレンダール、妖精神アステリア、酒幸神サカロスの9神殿が知られています。

 その中でも一番大きな規模を誇るのが、始祖神ライフォスの神殿です。  旧市街の北門に位置する場所に建つ白亜の神殿は、その威容を大きく主張しています。ザルツ地方のライフォス信者にとっては総本山とも言うべき場所であり、ここは多くの巡礼者が訪れますし、またライフォス神官が寝泊まりしています。  そのライフォス神殿の一番上に立つのが、ルキスラ帝国現宰相ベアトリス・エインズレイです。彼女は宰相であると同時にライフォス神殿を統括する神殿長でもあり、平時には神殿で司祭として働いている姿もよく見られます。また、城に居る時でも皇帝の許可の下、その一部を市民たちに開放するなど、積極的に臣民たちと関わる姿勢を見せています。

 旧市街の南門を守護しているのが、騎士神ザイアの神殿です。ライフォスの神殿に比べるべくもありませんが、ザイアの神官戦士たちは街の治安維持にも協力しており、街のお巡りさんとしても親しまれています。

 その他の神殿について、此処に記述することはしませんが、ルキスラは明確に国教を定めてはおらず、信仰は問題のない範囲で自由が認められています。  始祖神の司祭であるベアトリスがユリウスに重用されていることに不満を示す各神殿の責任者は居ないではありませんが、ライフォス神殿やその信者のみを優遇するような措置は一切取っておらず、臣民たちの多くが彼女を神官でありながら政治に参与する“黒衣の宰相”として認めている為、表立って物申すことは出来ない状況となっているようです。

中継塔《インペリアル・センダー》

 遺跡区の広場に存在する全長70mに達するほどの高層建築物、それが帝都ルキスラの中継塔《インペリアル・センダー》です。
 帝国の威光を示すかのように高く聳え、その表面は黒く美しく光っています。公都の《デュークダム・ピラー》と同じく時計塔としての役割も果たしており、上部には鷲をモチーフとした帝国の紋章が飾られています。
 公都と同じくその一部は一般の人間たちにも開放されており、ルキスラの観光スポットのひとつとしても有名になりつつあります。

帝都・公都の地下大遺跡

帝都地下大遺跡《調の神殿》

 帝都ルキスラの地下に広がる広大な遺跡です。
 多層式の構造になっており、表層近くは魔動機文明時代の遺跡で、奥に行けば行く程時代を遡った遺跡が見られるとされています。最終的には神紀文明時代のものと思しき構造の遺跡が広がりますが、神紀文明期や魔法文明期の部分については、殆ど生き残っている部分がなく、また有力な情報もなかったというのが帝国政府による公式発表です。

 調査が進んだのは、ユリウスが皇帝位に就いた15年前からで、そこから多くの冒険者も調査に駆り出されましたが、確かに魔法文明時代以下の層にはこれといったものもなく、魔剣らしい魔剣を得た者も居ないとされています。そんな状態でしたから、この《調の神殿》は、時代を追うごとに街の上に街を造るといったことを繰り返して現在の形になったのではないか、とされています。
 地下には《大破局》時の人族の反撃によって追いやられた蛮族の残党やアンデッド、暴走した魔動機械などが多く残っていましたが、ユリウスの治世になってから調査と同時にそれらの討伐も大々的に行われ、現在では遺跡に残る障害はすべて排除されているといって差し支えない状況です。

《大破局》時の戦火によって、この遺跡の元となった街も殆どが破壊されてしまったものの、魔法文明時代以前の層と比べて形を残しているものも多く、ここ15年でのルキスラの魔動技術革新に大きく貢献しています。
《調の神殿》という名称については、魔動機文明時代の層の街に神殿と思しき建物があり、その神殿に魔動機械を利用した多くの楽器が残されていたというのが由来となっています。当時の住人たちは、宗教音楽に至るまで魔動機械を利用していたのか、それとも何か別の理由でそのような建物を造ったのか、それは今でもはっきりと分かっておらず、学者たちの間でしばしば論議が交わされています。ひとつ確かなことは、その神殿では始祖神ライフォスのものと思しき神像が見つかっており、当時からこの地方では始祖神の信仰が盛んであったことでしょう。

公都周辺地下大遺跡《響の楽園》

 公都の地下の円周上に広がる遺跡です。一部は海底遺跡にもなっていますが、空間は密閉されており、内部に水が浸入しているようなことはありません。
 様子を見る限り、魔動機文明時代の遺跡と目されていますが、一部には魔法文明時代の技術と思われる箇所もある為、《調の神殿》と同じく、古くから技術を継いだ遺跡であるとされています。

 調査はダーレスブルグの独立後から行われてきましたが、まともに機能するものは殆ど残っておらず、冒険者たちの間では見かけだけの外れ遺跡という評価がなされています。しかし、楽園の名が示す通りに、遺跡内部には今も尚緑が生い茂り、何処からともなく美しい水が流れ出で、また存在する建物だけははっきりとその形を残しており、見る者を魅了する光景が広がっています。また、それらの美しい情景が響かせる音の心地よさも、この遺跡のネーミングの理由のひとつとなっています。
 何故植物たちが枯れることなく生きているのか、流れている水はどのような機構を用いて何処から流れて来ているのか、それらは一切判明しておらず、何かしらの奇跡によって形成された神秘的な場所なのではないかと、神聖視されている場所です。
 その様な場所ですから、評判を聞いて、一度は訪れてみたいという人間は後を絶ちません。公国政府はそれに対し、最も安全が確保されている公都南の区画だけを一般に開放しています。当然セキュリティは固く、管理されている区画外に出入りすることは禁じられています。