虚ろの輪音

第二部 第五話「蒼の叡智、灰白の花」 - 05

エリカ
「あ……や、った……」
ヤンファ
「こんなモンだなァ」
ソルティア
「ふぅ……一時はどうなることかと思いましたが」
#ルナティア
「……私が参加する必要は無かったみたいね」
ヤンファ
「いやァ? 一応、助かったぜ」 そこまで素直に礼はいわない
ソルティア
「割といてくれないと危なかったけどね……」
#ルナティア
「最後の話よ」 それ以外はいないと危なかったわ。
ソルティア
「あぁ。まぁ、後詰の出番が無いのは悪いことじゃないしね」
エリカ
「……はあ」
シャルロット
「へっへー! ざっとこんなもんです!」 自慢げに胸を張って
#ルナティア
「……」 じっ。
シャルロット
「……?」 るなににらまれとる
#ルナティア
「……栄養って大事ね、と思って」
ヤンファ
「……ぷっ」 噴出した
#ルナティア
「……」 ぎろり。
エリカ
「……」 じとー。
ヤンファ
「おっとォ、思い出し笑いだ」 両手挙げて
ソルティア
「………」 僕は貧乳派ですし。正確に言えばルナ派なんですけど
シャルロット
「……? よくわかんないですけど、助かりました!」 ルナに握手握手しつつ
#ルナティア
「……そう……」
ヤンファ
「ン、まァ、とりあえず終わって良かったってことにするか」
#ルナティア
「それより、カエルレウスは……」
シャルロット
「はい。……っと、カエルレウスさんは」 さん? サマ? わすれちゃった
エリカ
「……と、そうだあっちは……」
#カエルレウス
うむ、こちらも済んだ」
エリカ
「……」 あ、終わってたわ
ヤンファ
「助けはいらねえみたいだなァ」 指でくいっとして
#カエルレウス
ばっさばっさと、3体の竜を無力化してからやってこよう。
ヤンファ
「怪我……もねェか」
ソルティア
「最高位の竜ですからね……その鱗は魔法も弾くといいますし」
シャルロット
「お疲れ様でした……3対1で、すごいですね」
ソルティア
「ありがとうございます、助かりました」 ぺこり
#カエルレウス
「いや、本来ならばこれは竜族の話だ。汝らの手を煩わせた事を謝罪すべきであろう」
エリカ
そういえばサイズ的にどれくらいなの? カエルさん
#カエルレウス
サイズは今戦ったの5体分くらいかな!
#カエルレウス
でかいわ。3,4体分にしとくわ。
エリカ
十分でかいわ。普通にエルダーね……
#カエルレウス
エルダーは余裕です。
シャルロット
「いえ……でしたら、色々なお話をしてくださったお礼。と、そういうことに」 にへら、と崩した笑みを浮かべて返す
#カエルレウス
「何、歳を取ると竜であれ誰かに長話をしたくなるものでもある」
エリカ
「……」 そういうものなのか……。
ソルティア
「……気をつけましょう」 まだおっさんとは言われたくない24である。
シャルロット
「ふふっ……でしたら、また今度特に用も無く、お話だけをしに参ります。よろしいでしょうか、カエルレウス様」
#カエルレウス
「構わぬ」 此処まで来る奴は稀だしな。
シャルロット
「ありがとうございます」 ぺこ、と頭を下げて
ヤンファ
「早寝早起きになるってのはホントか?」 年取ると
エリカ
「……ヤンファさん」 じと。
ヤンファ
「な、なんだよ」 そんな変なこと訊いてないだろ!
#カエルレウス
「眠る時間は、多くなったやも知れぬな」
ヤンファ
「ほー、老後は隠居だな」 いい生活できそうだ
エリカ
「……」 何か。意外と気さくなんだろうか……。
シャルロット
「じゃ、急いで戻りましょうか。色々、進めなきゃいけないことがあるはずです」
#カエルレウス
「うむ、アレらの弔いは我に任せておくがよい」
#ルナティア
「…………」 いつの間にかほぼ沈んでいる太陽を見て。
ソルティア
「……いや……今日はここで野営かな」 とルナの視線の先を見て。
エリカ
「……確かに、もう日が落ちちゃったし、今から下山っていうのもちょっと」
#ルナティア
「……そうね。あなたたちは、この辺りで一泊していけばいいわ」
ソルティア
「……ルナ、もう行くの?」
ヤンファ
「あァ、お前は帰ンのな」
#ルナティア
「ええ、さっき言っていた話だけ済ませたらね」
エリカ
「……大丈夫なの?」 今から下山(かえる)とか。
シャルロット
「……怪我は治癒できてますけど、道具とか大丈夫です? 足りないものがあったら御渡ししますよ」
ヤンファ
「ソイツに心配は要らねえだろォ」
#ルナティア
「平気」
#カエルレウス
「……ふむ、行くのか、“断罪者”よ」 とルナティアに。
#ルナティア
「……!」 カエルレウスの言葉に、一瞬だけ目を(みは)って驚いて。
ソルティア
「……断罪者……?」 カエルレウスを振り返り。
ヤンファ
「………」 断罪者、か
エリカ
「……?」 何か、若干物騒な単語が。
#ルナティア
「……そう、そんな所まで観測()てるのね」
シャルロット
「……」 ちらり、とカエルレウスを見て、すぐ視線をルナに戻す
ヤンファ
「………」 “死神”は名乗っているもの、と言っていたが。そっちが本当の呼び名か
#カエルレウス
「我が言わずとも、汝らもいずれ知る事になろう」
エリカ
「……」 なんのこっちゃ、という顔。
シャルロット
「ええ。そして、決着をつけなければなりません」
#ルナティア
「……何でも知っている割に、空気の読み方は知らないのね」 とカエルレウスに苦苦しげにいって。
ソルティア
「………」 心配そうに眉を潜めて。
#ルナティア
「……」 首を横に振り、その話を区切るように。 「私が話そうと思っていたのは、《蒼銀戦役》の話よ」
シャルロット
「……?」 またよくわからないところから
ソルティア
「……あぁ……」 何かに気付いたような顔に。
#ルナティア
「その様子だと、ソルはアカシャや《蒼銀戦役》の話、まだしてないのね」
ソルティア
「うん……話す機会が無くてね」
#ルナティア
「話す機会を作ろうとしなかった、の間違いじゃないといいけれど」
ソルティア
「おおっぴらに話すようなことでも無いと思ってたからね……」 苦笑して。
ソルティア
「触り位しか話してないよ……シャルロットさんは、その時はいなかったけど」 第一部二話後の幕間くらい。
シャルロット
「……おや?」 そういえば聞きにいかなかったあつまりがあったな
#ルナティア
「……まぁ、あなたに関わる部分については、ソルが話せばいいわ」
エリカ
「……ええと」 微妙に話が読めないけど。
ヤンファ
「……で? 何が話したいんだよ」
#ルナティア
「私が言っておきたいのは、私の雇い主の話。ヤンファには、もう話したわね」
#ルナティア
「私があなたたちに与える、最後のヒント」
シャルロット
「雇い主……ですか」
#ルナティア
「ええ、そうよ」
ヤンファ
「……そうかィ」 なら俺は黙っておこう
#ルナティア
「……猟犬事件の時に、あなたたちと最初に出会った時、神殿襲撃事件の後、《響の楽園》の一区画にで会った時、《呪音事変》の直前にマグダレーナ殿下に予告状を出した時」
#ルナティア
「霧の街であなたたちを助けた時も含めて、私は同じ人物の命令で動いていたわ」
エリカ
「ちょ、ちょっと待ってよ、霧の街はともかく、それより以前のは……」 ギルモアじゃあ。
#ルナティア
「《呪音事変》までは、表面上の雇い主は開放派のギルモアだったけれどね」
#ルナティア
「ギルモアに雇われたのも、その人の命令」
ヤンファ
「………」 そう、一人だった
シャルロット
「……最初は、バッカス様と関わりがあったのでは、と思っていたのですが」 亡き後の考察周りのはなしだけれど
#ルナティア
「あの人とも、話した事はあるわ。いくらか、通謀したこともね」
#ルナティア
「けれど、違う。私は、《蒼銀戦役》のソルと別れるその直前から、ずっと同じ相手の命令に従っている」
ソルティア
「直前、から……?」 なん、だと
シャルロット
「そうでしたか」 こんなところにもつながりがあったんだな
エリカ
「……どういうこと? あの事件は、黒幕が別にいるってこと……?」
#ルナティア
「……これが、私から出せる限界。後は、あなたたちが考える事よ」
エリカ
「……」 むう。
シャルロット
「……《蒼銀戦役》に関わりがある人で……?」
#ルナティア
「ええ、そうよ」
ヤンファ
「………」 頭をがしがしと掻き
シャルロット
「むぅ……」 いまひとつピントが合わない。
シャルロット
蒼銀戦役でのソルの立ち回りを一切知らない私は答えが多分出せない
ヤンファ
「ま、答え合わせをしたトコで正解なんざ言う気もねえだろ」
#ルナティア
「言ったでしょう。私に出せるのはこのヒントが限界なの」
ソルティア
「………」 顎に手を当てて考え込み。
シャルロット
「一つだけ……答えられなければ沈黙で返してくれればいいです」
#ルナティア
「……何?」
シャルロット
「……その命令を受けたのが別れる直前で、そこからずっとそうなのは……ソルティアさんの為、だったんですか?」
#ルナティア
「……違うわ」 自嘲するように口端を歪ませながら首を横に振り。 「……全部、自分の為」
ソルティア
「………」 俯きがちに、困ったように笑い。
#ルナティア
「……ソルは、アカシャを助けたり、こうして、あなたたちと一緒に居られるような才能を持ってた」
#ルナティア
「でもね、私は持っていなかったのよ。この世界では、独りでしか生きられなかった」
ソルティア
「………」 否定は出来ない。結局のところ、自分は彼女を引き寄せる事が出来なかったんだから。
#ルナティア
「それが嫌で、私は私を繋ぐ“鎖”に身を委ねた。それだけよ」
エリカ
「……意味分かんないわ」
#ルナティア
「分からないでしょうね。あなたたちとは、違うもの」
ヤンファ
「………」 ルナティアの表情をじっと見つめ
#ルナティア
「……何よ」
ヤンファ
「……いやァ?」 ふっ、と嘲笑い  「ま、言いたいことは前言っただろォ?」
シャルロット
判りません。ルナの言う雇い主の話や、そんな風に言うルナのことは」
シャルロット
はっきりと、真っ直ぐ目を見て
#ルナティア
「……」 じっとシャルロットを見つめ返して。
ヤンファ
「………」 シャルはここで引き寄せようとする……が、おそらく、この対話も長くは続けれまい
シャルロット
「でも、私の事は判ります。いいですか、私はそんな風に生きるルナを“そうなんだ”なんて納得する気が、私にはさらさらありません」
#ルナティア
「……そうね、あなたはそういう人」
シャルロット
「ソルティアさんだって、ああ見えて引っ込み思案で黙っていたら何にもしない奥手さんです。こうしているのも、私が巻き込んだからです」 ぽん、と胸に手を当てて
ソルティア
「………」 何か酷い言われようだ
ヤンファ
(まァそれはソルティアが悪い)
エリカ
「……」 ちら、とソルティアの方を見る。
シャルロット
「才能が無いなら私が押し付けるし、繋ぐ“鎖”なんかちぎって投げて、しっかり”手”を繋いで見せます。精々、首を洗って待っていてください!」
ソルティア
「……本当は、それは僕が言わないといけない台詞なんだけどね」 苦笑しつつ。ただし、苦みは自分に向けられたものだ。
シャルロット
勿論」 じ、とソルティアを見て 「ソルティアさんだって、そうです」 ほっといたりなんかしないからな
ソルティア
「駄目と言っても連れて行かれそうですね」 どこか楽しそうに笑う。
シャルロット
「当然です。私は我侭なお姫様なんですから」 ふふん、ともう振り切った顔で言い放って
ソルティア
「でも、シャルロットさんの言うとおり……僕一人では無理だったけど、皆でならきっと君を連れ戻せる。そう思うよ、ルナ」 淡い笑みを浮かべて。
#ルナティア
「それが、あなたの手に入れた力なのね」
#ルナティア
「……ふふっ、そうね。……今の私は、何処かでそれを期待してる」 俯いて左手で左目を押さえて。
ヤンファ
……頃合か」 ルナティアの様子を見て
#ルナティア
だから、待ってる。《虚の世界》で」 顔を上げ、ふ、と口元に笑みを浮かべて四人にそう告げて
シャルロット
「虚の……世界……」 不穏な響きのソレに、だが強く笑って返す
#ルナティア
「……行くわ。これ以上は、居られない」
ヤンファ
「みたいだなァ」
ヤンファ
「斬られんのは御免だ。さっさと行っちまいな」
#ルナティア
君たちに背を向けて、1歩2歩と歩いて行く。
ソルティア
「ん……それじゃ、また……今度は会いに行く方かな」
ヤンファ
「……ま、死ぬなよ。次に会うときも、その後も、な」
エリカ
「……」 むす、として背中見送る。
シャルロット
じゃあ、また会いましょう!」 さようなら、とは言わずに手を振って見送る
#ルナティア
「あなたたちこそね。……それじゃあ、また」 君たちから距離を置くと、その姿は風景に溶け込むようにして消えてしまう。
#カエルレウス
「……」
エリカ
「……あ」
ソルティア
「………」 寂しげに、ルナの消えた場所を見つめて。
ヤンファ
「………」 やはりそう……なのか。あの様子は俺らと近づけば近づく程、“何か”に反してしまうのだろう
エリカ
「………………まあいいや」 協力してくれてありがと、とか。一応言っとくべきだったなあ、と思ったけど。もう遅い。
ソルティア
「……はは、大丈夫だよエリカちゃん。今のルナなら、言わなくても多分分かってるよ」 と顔色から察した。
エリカ
「……言わなくてもわかるとかそういう問題じゃないです。こういうのはなんて言うかこう……礼儀の問題なんですから」
シャルロット
「“次”、言えばいいでしょう。覚えていれば、ですが」
ソルティア
「じゃ、シャルロットさんが言うように、次だね」 小さく笑い。
エリカ
「……その次がいつになるか解んないけどね」
#カエルレウス
「汝らは気を悪くするかも知れぬが、人というのは、実に面白いものだな」
ヤンファ
「あン?」 そっちを振り向き
ソルティア
「ありがとうございます……と言うべきでしょうか」 笑いながら振り返り。
シャルロット
「気分を害したりはしませんが、面白いですか?」
#カエルレウス
「人の心程、移ろいやすく、そして確たる強さを持ちうるものはあるまい」
#カエルレウス
「うむ、実に興味深い。……何千、何万年と観測を続けても尚、その総てを知る事は出来ぬであろうな」
ヤンファ
「そりゃァそうだろ。こんだけ多くの人がいるんだぜェ?」
ヤンファ
「竜と違って、長生きしてずっと同じじゃァねえ。俺らの命は儚い」
ヤンファ
「移り変わって、代わって、生きてきてるんだよ」
#カエルレウス
「成程。道理だ」
シャルロット
「だからこそ、観測者はやめられない、ですかね」 そういう楽しみが無ければ、きっとそんなものやめているだろうし
#カエルレウス
「然様」
ソルティア
「………」 寿命は無いナイトメアなんだけどここで茶化さない僕です
ヤンファ
「この先、どんな奴らがこの世を継いでいくかは知らねえが、な」 肩を竦め
シャルロット
「流石に、今から自分たちの子や孫世代の未来を憂うのは早いとお思いますよ……?」
エリカ
「……正直今のことで手一杯じゃないですか」 気が早いわ。
ヤンファ
「子孫とかそこまで言ってねえだろォ……」
ソルティア
「でも……《蒼銀戦役》か。あんな頃から今まで続いてたなんて……」
ソルティア
「……野営の時、当時の事、少しだけ話しておきましょうか。もしかしたら、ルナの雇い主に繋がる話があるかもしれません」
#カエルレウス
「……さて、人の子らよ、今宵は身体を休めるが良い」
#カエルレウス
」 東の空を仰ぎ。 「不穏な気配も漂っている。ゆっくりと身体と心を休められるのは、今宵で最後となるかも知れぬ」
シャルロット
……そうですか」
エリカ
「……不穏、ですか」 東の方つられて見つつ。 「……」 次に通信機見て。気がかりが増えたっていうのに。
#カエルレウス
「今宵、汝らの身は我が守ろう。心置きなく、その身を休めるが良い」
ソルティア
「感謝します、カエルレウス殿」
シャルロット
「お言葉に甘えさせていただきます。ようやく、ゆっくり休めそうですし」

GM
夜、カエルレウスは空を飛びながら周囲を警戒してくれている。
GM
そんな中、君たちはひとつの火を囲みながら、食事の準備を進め、それを摂り終えてからそろそろ休んでおこうか、となった所だ。
ヤンファ
「……で、そろそろ話してくれるんだろうなァ?」 誰に、とは言わず声を掛ける
ソルティア
「えぇ……あの時、どの程度までお話しましたっけね……」 火掻き棒で薪をつつきつつ
シャルロット
「……」 じっと静かに待ってよう
エリカ
「8年前に何か事件があって、そのときアカシャちゃんと会った、くらいだと思います」
ヤンファ
「戦役の話なら、大まかに知ってる。とりあえずそこで何があったのか、お前視点から話してくれりゃァいい」
ヤンファ
ベアトリスに助けてもらった、とかいう話はきいたっけね
ソルティア
「……《蒼銀戦役》は、クーデリア公爵領にある小さな村、ノトル村から始まりました」
ソルティア
「その戦役の最中、僕らは影で活動していました」
ソルティア
「活動の内容は……もう隠す事もありませんかね。ルナは死神として活動し、僕はそのサポート……調査や侵入の手引きなどをしていました」
ヤンファ
「お前が導いて、あの女が殺す、か」
シャルロット
「……」 そんなころから活動していたのか。内心驚きつつ
ソルティア
「僕は当時からこの通りの見た目で、人にまぎれて行動したりするのは得意でしたからね……人に警戒される事も、少なかったですから」
ソルティア
「アカシャと出会ったのは、戦役の最中です。……初めて会った時、アカシャは僕らにとって、“標的の娘”でしかありませんでしたが」
エリカ
「標的……の、娘」 ということは……。
ソルティア
「彼女の両親を殺したのはルナであり……僕でもある、と言う事です」 小さなため息と共に。
シャルロット
「……続きをお願いします」 あれこれ口を出す段階じゃない。
エリカ
「………」
ソルティア
「……アカシャを保護して僕らが別れた後、僕はザルツの高官に庇護を求めました。それが、ベアトリスさんです」
ソルティア
「ただ、当然何も無しに庇護など受けられるはずもありません。ただの難民ならともかく、僕は知られざる“死神”の片割れ、でしたからね」
ソルティア
「その時、ベアトリスさんに差し出した代価が、“ノトル村の虐殺の真実”です」
シャルロット
「対価……?」
ソルティア
「元々は、ルナが仕入れてきた噂話でした。ノトル村の虐殺は皇帝派でなく、反皇帝派が起こしたものである、と」
ヤンファ
「匿ってもらうための対価……ってトコか」
ソルティア
「その調査を続けた結果、僕らはそれが真実であると確信できる情報にたどり着きました」
ソルティア
「何しろ、《蒼銀戦役》の引き金となった事件です。それを覆せる情報は、僕らの庇護を約束してもらうのに足りるものだったようです」
エリカ
「そんなことが……」
ソルティア
「僕らが《蒼銀戦役》で深く関わった事と言えば、そのくらいです。一つ気になるのは、ノトル村に関する噂を、ルナがどこから仕入れてきたのか……」
ヤンファ
……その直前に、雇われた、か」
ソルティア
「……僕らは流れ者でした。《蒼銀戦役》に真相があるにしても、それを調査する価値があったのかどうか……最終的にはそれが助けになったのは確かですが」
ソルティア
「ここからはただの推測ですが、ノトル村の真実を明かし、それがメリットとなる人物が雇い主だとしたら……」
シャルロット
「……いや、それはどうなんでしょうか」 
ソルティア
「……シャルロットさん、何か気付いた事が?」 顔を上げて。
シャルロット
「ああ、いえ……良く判らないことが多くて」 
シャルロット
「少し、違う……私は最初、ユリウス殿下か、或いはその下の誰かだと思っていました。でも、ソルティアさんの話だと少し、事情が違いますよね」
ヤンファ
「………ふむ」 
エリカ
「そういう人が雇い主なら……」
エリカ
「皇帝派……ってことですよね」 メリットがあるのは。 「でも、だったらベアトリスさんがソルティアさんから対価を受け取る理由がないんじゃあ……」
ヤンファ
「あァ、それは俺も同じに思う」
ソルティア
「そうだね……それだと、少なくともベアトリスさんは雇い主と関係ない、のかな」
エリカ
「まあ……、うーん」
エリカ
「雇い主が皇帝派の人なら、ベアトリスさんに情報が共有されてないのは変な気がしますし」
ヤンファ
「というより、反皇帝派の“誰が”虐殺したんだ?」
ヤンファ
「その情報を知ってる奴が、その中にいないと、それは誰も与えれないんじゃァねえのか」
エリカ
「だったら、反皇帝派の人に雇われてそっち側から話を聞いたっていう方が……」 自然なような。
ヤンファ
「なら、雇ったのは“何”だと思う」 びっ、とエリカに指を向け
エリカ
「えっ? い、いや何って言われても」
シャルロット
「もう少し情報が欲しいのですが」 と、ソルティアに聞いてみよう
ソルティア
「はい、何でしょう。答えられる事なら答えますが……」 もしかしたらGMから答えが出るかもしれないが
シャルロット
「時折言う、ルナの劣化品……というのは、生い立ちから何か関係があるのですか?」
ソルティア
「それは彼女の名前……と言うか、呼ばれていた名からの事でしょうか」
シャルロット
「ええ、そのあたりの事がちょっと気になっただけなのですが。深い意味がないのであれば構いません」
ソルティア
「彼女は村にいた頃、ルナティック・インフェリアーと呼ばれていました。それを縮めてルナティアと言う名前にしたわけです」
ソルティア
「ルナティック・インフェリアーとは“狂った劣等品”と言う意味です」
シャルロット
「……そういうことだったんですね」 合点がいった
エリカ
「……そういう由来だったんですか」 なんだかなあ。
シャルロット
「月は人を狂わせるといいますから。裏と表の両面を見た意味なのでしょう」
ソルティア
「僕はそのルナティアのルナと言うのを月の意だと思ったんですがね……」 だから自分はソル(太陽)なのだ
ヤンファ
「んー、じゃァ話の向きを変えるか」
ヤンファ
「ソルティアがベアトリスに与えた情報は、戦に有利をもたらしたんだよなァ」
ソルティア
「ええ。決定打にはなったかどうかまではわかりませんが……」
ソルティア
「それと、虐殺を行った反皇帝派の人物と言うのは何名かいますが……ほぼクーデリア公爵の主導、と見ていいと思いますよ」
シャルロット
「うーん……」
ヤンファ
「反皇帝派に裏切りたい奴が居たのか、別の事情があったのか……いや」 それは微妙だな
エリカ
「……ええと、ちょっと確認、したいんですけど」
ソルティア
「うん、何かな?」
エリカ
「あの子が情報を仕入れてきた、っていうのと、調査したっていうあたりの時系列っていうか……?」
エリカ
「ちょっと混乱しちゃって」
ソルティア
「時系列ですか……」 思い出すように宙を眺めて
GM
情報仕入れる→調査→密告→蒼銀戦役終了へ、でいいよ。
ソルティア
「……という感じですね、順序としては」 と言う事だそうです。
GM
アカシャの保護時期はまあそこまで厳密には関係ない感じだけど調査と密告の間だな。それでソルとルナが道を違えた訳だから。
GM
密告はソル単独でのベアトリスへのアプローチです。
GM
と、情報が錯綜しないように補足を。
エリカ
「どうして調査したかは、ソルティアさんは、知らないんですよね」
ソルティア
「何故、という理由は聞いていませんね……」 ませんよね?
エリカ
「……うーん」 わざわざちゃんと調査したっていうことは、その時点で雇われてたって感じっぽい。
エリカ
「でも皇帝派の人って感じもしないけど……情報が伝わるのが前後したとか……?」
ヤンファ
あァ、でもやっぱりそうかァ」
エリカ
「……何か分かったんですか?」
ヤンファ
「いや、確証はないんだけどな」
ソルティア
「何か思い当たる事があったら、言って欲しいです。僕のほうもなにぶん古い記憶ですから、それで何か思い出すかもしれませんしね」
ヤンファ
「ソルティアが与えた情報が戦の流れを変えたってんなら……虐殺と、その中に一つ“マズい情報”が混じってたんじゃァねえかな、ってな」
シャルロット
「……」 こっくりこっくり
エリカ
「……」 寝てるし。
ソルティア
「マズい情報、ですか……」
ヤンファ
「……んー、でもまァちゃんと答えは出ないんだよな」
ヤンファ
「なんかこう、つっかえる部分があるっつーか。そんだけなんだよ」
エリカ
「……正直私はお手上げです」 エライ人の派閥のこととかよくしらないし。
ヤンファ
「既に放棄してるやついるしなァ」 寝てるぞ
シャルロット
「とりあえず……後はもう少し裏を……実はアランさんに調査もお願いしましたし……」 眠い。うつらうつら
ヤンファ
「……ま、あんな儀式の後に竜と戦ったしな」
ソルティア
「……そうですね。僕もこれ以上話す事は思いつきませんし、もう休みましょうか」
エリカ
「……ていうか、それより……」
ヤンファ
「ン?」
エリカ
「……いえ、なんていったらいいのか」 微妙にソルティアの方見たりしつつ。
ヤンファ
「あァ……さっきの話か」
ソルティア
「……? どうしたの、エリカちゃん」
エリカ
「さっきの……も、そうですね」
ヤンファ
「お前がどんな道を歩いてきたのか、ってのを聞いて色々思ったんじゃァねえの」 
エリカ
「……すいません、やっぱりなんか、いいです」
ソルティア
「……ン、まぁ……中々想像のつかない生き方は、してるかな」 苦笑して
シャルロット
「……そうですね、よく、想像もつきません」 はふ
エリカ
「……」 想像、つかないからこういうこと簡単に言っていいものか。
ソルティア
「ん」 安心させるように笑みを浮かべて。
エリカ
「……」 その笑みを見て一気に不機嫌顔に!
ソルティア
「……… え、えりかちゃん?」 困り顔になって
ヤンファ
「……やれやれ」 肩竦め
エリカ
「……あの、やっぱり言いますけど」
エリカ
「ソルティアさんって、あの子をどうしたいんですか?」
ヤンファ
「………」 まァ、そう思うわなァ
ソルティア
「……どうしたい、って……」 えーとルナの事かアカシャの事か。ルナだと思うけど
エリカ
「そのままの意味です」
エリカ
「良くないことから手を引かせたいのは、わかりますけど、そのあと、どうするんですか?」
ソルティア
「……その後……か。考えた事も無かったな……」 宙を見上げて。
エリカ
「……考えてあげてください」
ソルティア
「……一緒に暮らしたい、と言う思いはあるよ。今まで僕がアカシャと過ごしてきたように、普通に……」
ソルティア
「人目を気にしたりせず、普通に仕事をして、休日を過ごして……そんな風に、誰もが過ごしてる日常を、共にしたいと思ってる」
エリカ
「……だったら、ちゃんとそうできる居場所作っておかないと駄目なんじゃないですか」
ソルティア
「ただ……極端な話として、恋人になりたいのか、とか夫婦になりたいのか、とかそういうのとはまた違って……」 うーむ
ソルティア
「そう出来る……居場所……」
エリカ
「あの子、犯罪者です。ソルティアさんは……ベアトリスさんに対価を払ったから、恩赦的なのがあるから今はいいんだと思いますけど、あの子は違うじゃないですか。……一応、以前マグダレーナ様に掛け合ってはいましたけど、それもどうなるかわかりませんし」
ソルティア
「……そう、だね」 確かに、自分もあの当時は犯罪者だった。だからこそ、アカシャを自分の手で育てられるように考えたわけだし。
エリカ
「別に国外逃亡しろとかは言いませんけど、なんていうか、一緒に暮らすならそういうところも考えないといけないし……それに、アカシャちゃんの両親の関係とか、その辺りとかも」
ソルティア
「う……」 一応アカシャにルナの事は話したが、半ば自分の意思を押し付けるような形だったのは否定できない。
エリカ
「……アカシャちゃんに、そのへんの話、してるなら、そこはいいんです、けど」
エリカ
「……あと、ですね」
ソルティア
「話は、した……けどね」 苦笑して。 「なんと言うか……返す言葉が無いなぁ……」 いつの間にか正座。
エリカ
「シャルロットが、ルナティアにあれこれ言うのは、友達だから、っていうので、まあ、一応納得してます」
シャルロット
「あ、一応なんですね……」
エリカ
「でも、私が納得いかないのは、なんで、」
エリカ
「“友達”のシャルロットに、なんで、それより近しい、親しいはずのソルティアさんが負けてるんですか。なんで一歩引いてるんですか」
ソルティア
「………」 本当に返す言葉がないぜ。たじたじ
ヤンファ
「………」 今日のエリカは怖いな
エリカ
「ソルティアさんとあの子は、多分、私は、家族みたいなものなんだなって思ってます」
ソルティア
「そう……だね。少なくとも、アカシャと同じような存在とは、思ってるよ」 どんだけアカシャを溺愛してるかはエリカなら分かるだろう。
エリカ
「……だったら! どうしてもっと強く手を引こうとしてあげないんですか。家族、なんでしょう」
ソルティア
「う……」 シャルの方がルナの事を知ってるんじゃないかとか、上手く言葉に出来ない事が多いとか、理由は色々あるがどれも言い訳と言われれば其の通り。
エリカ
「……シャルロットが、あの子にいろいろ言ってますけど、でも、あの子自身がそういうこと言って欲しいのって……、ソルティアさんなんじゃないですか」
ソルティア
「そう、かな……」 そうなんだろうか。今までの、自分が一番彼女の事を知っている、と言う自負は揺らいでしまっているが
エリカ
「……どうしてそんな自信無さげなんですか!」 どうしてか、問い詰めてるこっちが泣きそうだ。
ソルティア
「………怖かったから、かな」 ぽつりと小さく呟き
ソルティア
「……ルナとは一度、喧嘩別れしちゃってるから。あの時も、色々話をしたんだ……でも結局、一緒に行く事は出来なかった」
ソルティア
「……だからこそ、どれだけ言葉を重ねても……届かないかもしれない、と言う気持ちが、どこかにあったんだと思う」
ソルティア
「彼女を取り戻したいと言う気持ちと、自分の思いは絶対に届かないんじゃないかって言う不安があって……」 一つずつ、自分の思いを確かめるように
エリカ
「……」 ソルティアなりの事情があるのは、わかる。だから、最初は言おうと思わなかった。けど。
ソルティア
「……嫉妬してたのかもね。シャルロットさんは、そんな僕の戸惑いをあっという間に飛び越していっちゃったから」 自嘲のような小さな笑みを浮かべて。
シャルロット
「……」 何となく自分も言葉に困ってしまって、黙って聞いている
ソルティア
「……僕なんかより、シャルロットさんの方が彼女の事を理解してるんじゃないか。そんな風に思って……あぁ、何か、みっともないね。ごめんね、二人とも」
ヤンファ
「……いや」 むしろこれでいい
シャルロット
「……んと……ん……」 言葉に困って、エリカに視線を向けて続きを聞く
ソルティア
「……僕もルナも、同じ未来を目指してるんだって……信じてるけど、信じてないんだよ、僕は。……信じられない、と言ったほうがいいかもしれない」 優しい代わりに優柔不断、と言う評はまさに其の通りなのだろう。
エリカ
「……ソルティアさん、あの子と一体何年一緒だったんですか」
ソルティア
「……16年、かな」
エリカ
「……だったら、シャルロットの方が知ってるなんて、そんなことあるわけないじゃないですか。16年分のリードが無いと思ってるんですか」
エリカ
「……」 はあ、とため息つき。
エリカ
「……断言しますけど」 実際どうだかわからない。でも、あまりにも見ていられないから、吹いてやる。 「絶対、今でも、“ソルティアさんのことを”待ってますよ」
ソルティア
「………ありがとう、エリカちゃん」 どんな思いでそう断言したのかくらい、読めないわけじゃない。それでも、酷く嬉しそうに笑って礼を言った。
ソルティア
「ありがとう……本当に」 もしかしたら、誰かにそう言ってもらいたかっただけなのかもしれない。君は間違ってない、それでいいんだ、と。
エリカ
「……助けてあげてください、家族なら」 これは自分へ返ってくる言葉でもある。
ヤンファ
「…………」 重い、が。今まで目を背けてきた分だと思えばまだ軽い方だな。
ソルティア
「なんだかなぁ……ごめんね、エリカちゃん。情けないねぇ、六つも七つも年上だって言うのに……」 とはいっても、人生経験で言えばたいした差はないんだが。
エリカ
「……ほんとにその通りです」 むすっとして。情けないにも程があるわ、といった感じ。
シャルロット
「……耳の痛いお話でした」 苦笑いだ
ソルティア
「愛想だけは、尽かされないようにしないとね」 はは、と笑って。
ソルティア
「よしっ!」 と、頬を両手でパンと叩いて気合を入れて立ち上がる。
ソルティア
「折角だから言っておきましょう。シャルロットさん!」 ずびし、と指を突きつける。
シャルロット
「は、はい!?」
ソルティア
「……貴女には負けませんよ。ルナが欲しいと言うなら、この僕を倒していく事ですね!」 何か冗談っぽいのは半分くらいは照れ隠しだろう、うん。
シャルロット
「い、いやあの……ルナが別に欲しいというわけでも……ああいや、人材としては欲しいのかな」 う、うーん?
エリカ
「……ソルティアさん」 まあ、なんかこう。 「あんまり変なノリで行くと、ヒかれますからね」
ソルティア
「え!? 駄目!? ご、ごめん、こういうことやった事無くてさぁ……」 また正座に戻る。
ヤンファ
「……あ」  「そういやァ、俺もこの前ルナティアと二人きりで話したわ」 俺も俺もーと挙手する
ソルティア
「よーしそこに直れ」 ちゃきっ
エリカ
「いつのまに……」  「はあ……」 なんかまあ、あとはいいや……。
ヤンファ
「いや、呼びに行っただけだって」 俺悪くない、と両手挙げて
シャルロット
「なんだか吹っ切れましたね……なんていうか間違った方向で……」
ヤンファ
「まァ、良いんじゃァねえの。へらへら笑って隠してるよりはいいぜ」
ソルティア
「まぁ、僕を倒していけと言うのはさすがに冗談ですけど……」 はは、と笑って座りなおす。 「ただ、嫉妬するのも劣等感を持つのも、もう止めようと思っただけですよ」
ヤンファ
(今の俺斬ろうとしたの嫉妬じゃねえの……?)
シャルロット
「全く、本当ですよ……次は私を押しのけるぐらいの勢いでいっていただきませんと」
ソルティア
「えぇ、そうしますよ。必要とあれば腕力で以って」 それはいいのか?
エリカ
「……」 何かひと通りぶちまけ終えたら穴に入りたくなってきたわ。
ヤンファ
「ま、何よりアレだ」
ヤンファ
「よく言ったエリカ!」
エリカ
「……なんでそんな偉ぶった感じなんですか」
ヤンファ
「いやァ、俺も言いたくて言いたくて仕方なかったんだけどなァ?」
ヤンファ
「こう、今のですっきりしたわ」
エリカ
「だったらヤンファさんが言えばよかったじゃないですか」 どうして私だけでこんな!
ヤンファ
「ンー、いや。俺が言うよりエリカの方がよっぽど効いたと思うぜェ」 怖かったしな
ソルティア
「そりゃあ効きましたよ、もう」 何せ、一番近くにいた具体的な“家族”の見本だったんだからな、ケイ家は。
シャルロット
「もう……エリカさん様様です。あんまり駄目だと、本当に愛想つかされちゃいますからね」
ソルティア
「うん、でも本当に幾ら感謝しても足りないよ……と言いすぎると本当に穴を掘り始めそうだからこの辺にしとくけど」
シャルロット
「じゃあ二人で同じ穴にでも入ったらいいです」 逃げ出したそうな顔してるし
エリカ
「……」 むー。
ヤンファ
「そう膨れんなって」 カッカッカ、とエリカのほっぺをつっつき
エリカ
「やめてください焼きますよ」
ヤンファ
「すみません……」 手をさっと下ろした
ヤンファ
「……と、いい加減話もこれぐらいにしとくか」
シャルロット
「そうですね。すっきりしたことですし、お休みしましょう」
ヤンファ
「よし、寝るかァ!」
エリカ
「ああもう……」 もそもそと穴ならぬ毛布に入り込み。
ソルティア
「そうですね、今日は見張りなども必要なさそうですし」
GM
そうして、ようやく一つの氷が溶けて、夜は更けて行く。
GM
これが、君たちに与えられた、最後の心休まる休息。
GM
次の“世界”はもうすぐ傍まで、迫っていた。