オープニングⅢ「影の姫君」

プレイヤーキャラクター紹介④

シャルロット・ヘリオドール

人間/女/16

ファイター/プリースト

 ダーレスブルグ公都の“騎士神”ザイアの神殿長を務めるジェラルド・ヘリオドールの元で育てられた金髪紫眼の少女です。
 奔放かつ快活な性格で、それが容姿にもよく表れています。
 箱入り状態で育った為、やや世間知らずなきらいがありますが、それを補ってあまりある才能(料理除く)を秘めており、戦闘技術から論理的な思考力まで、驚異的な資質を垣間見せます。

 本来はダーレスブルグ王家に連なるイエイツ家の生まれであり、《虚音事変》と同日に、セフィリア神聖王国にて生を受けました。それ故に、事件を知る者たちからは忌避され、そんな者たちの目からシャルロットを守る為に、実の父親や姉の手によってジェラルドの元へ預けられました。


オープニングⅢ 「影の姫君」

GM
シャルロット・ヘリオドールはダーレスブルグ公都のザイア神殿の長、ジェラルド・ヘリオドールの元で育てられた
GM
やんごとなき生まれでありながら、とある事情により君は幼い頃よりジェラルドの手で、騎士神ザイアの神官戦士として厳しくも優しい教育を受けて来た
GM
母は君が物心つく前に他界、本来の父も5年前に他界している。故に、君の家族と呼べる人物はこのジェラルドと、時折心配になってどうにか連絡を取ろうとする姉の二人だけだった
GM
フーロン・シャンリークという剣の師匠にも恵まれ尤も、この彼も既にこの世の者ではないのだが類稀な剣の才能を余すことなく発揮し、心優しく育った君は、今ひとつの大きな岐路に立っていた
GM
それは、「冒険者」の道を選ぶこと
GM
高まる国内外の緊張、それによって多くの人々が災難や困難に見舞われる中、君は今までのようにただ神殿で修業を積むだけの生活に耐えられるような性格ではなかったのだ
GM
君の決意を聞いた父と姉は、迷いはしたもののそれを許諾。護衛という条件付きで君の冒険者活動を許すところとなった
GM
そして今、君は付き人であるヤンファ・シャンリークと共にザイア神殿のとある部屋の扉の前に居た
GM
その奥は、養父であるジェラルドの私室だ。ノックをすれば、すぐにでも返事があるだろう
GM
時刻は午後8時を回った頃。神殿内に人気は殆どなく、辺りは静まり返っている
ヤンファ
「なんでわざわざ今日なんだよ……店で酒飲んでゆっくりする予定だったっつーのに」 はぁー
シャルロット
「………ヤ、ヤンファさん……おかしな所は、ないでしょうか?」 襟元のリボンをしめたり、髪を手櫛で撫で付けてはおろおろとしている。
ヤンファ
「ン、あァー。良いんじゃねェ?」 適当
シャルロット
身を包むのは青基調の神官服ともいえない、なかなか刺激的な軽鎧だ
ヤンファ
「自分の親父に会うだけだろうが。そんな畏まる必要はねえだろ」 相変わらず真面目な。
シャルロット
「ヤンファさん! こっちを見てから応えてくださいせめて!」 もう! と両手を振り下ろして不満を垂れる。
ヤンファ
「………」 面倒くせえな、と思いつつシャルロットに向かい合う。じー
ヤンファ
「リボン、右側が長ェ」 
シャルロット
「お父様、といえど、ジェラルド=ヘリオドールは皆の長。その方にこうして正式にお会いするのでしたら、私も正装をもってお応えするのが道理……って、え!? みぎですか!」
ヤンファ
「正装ねェ」 俺なんていつも通りだぞ
シャルロット
ぐいぐい。とリボンを引いて位置を調整しては、手鏡を取り出して確認する。
ヤンファ
「ま、俺にはあんま関係ねえ話だ。リボン整えたら入んぞ」
シャルロット
「あ、え、ちょっとまって下さ……はい! 大丈夫です!」
シャルロット
ぽん、と最後にリボンを軽く叩いて、背筋を伸ばして胸を張る
ヤンファ
「うし、ノックすんぞ」 つっても、この元気な声が響いてれば既に気付かれてるだろうが
ヤンファ
こんこん、とドアをノックする
ヤンファ
「ヤンファ・シャンリーク、及びシャルロット・ヘリオドール両名、到着しました」
GM
君たちが扉をノックすれば
GM
「開いている。入るといい」 と君たちにとっては聞き慣れた声が入ってくる
GM
何処か苦笑したような口調なのは、やはり君たちのやり取りが聞こえていたからか。
シャルロット
「し、失礼します」  カコカコ。ヤンファに続くようにしてぎこちなく部屋に入ろう
ヤンファ
「はっ、失礼します」 一応きりっとした声を張り、ガチャリと扉を開く
GM
部屋に入ると、シャルロットには見慣れた光景が目に入る。派手な調度品は一切ない、ザイア神官の父らしい無骨な部屋。だが、その何処かに温かみを感じる。ヤンファには、この堅苦しさは受け入れがたいものかも知れないが
#ジェラルド
「二人共、そう畏まる必要はない。この場には私たち3人以外には居ないのだからな」
#ジェラルド
焦げた茶色の短髪の、彫りの深い壮年の男性が、執務机を挟んで君たちを迎えた
#ジェラルド
「そちらに座りなさい」 君たちを確認すると彼は立ち上がり、応対用のテーブルと椅子に君たちを促す
シャルロット
「は、はい、お父様」 おずおずと中に踏み入り、前まで行こう
ヤンファ
「恐れ入ります」 肩の力を抜き  「改めて、久しぶりですね」 椅子に腰かけつつ
#ジェラルド
彼の一挙手一投足はどことなく威厳に溢れ、神殿長という重要な立場に立つ人物であることを嫌でも認識させられる
#ジェラルド
「何をそんなに緊張しているんだ、シャルロット。もう少し肩の力を抜かなければ、これからが大変だぞ」
ヤンファ
「そうだなァ。冒険者の店でそんなんじゃ、周りの奴らにナメられる」
シャルロット
「そうですが……はい、そうですね。頑張ります」 さらに入る方の力
#ジェラルド
「こういう所がシャルロットの魅力ではあるのだがね」
#ジェラルド
君たち二人が着席すれば、彼もテーブルの反対側に腰掛ける
シャルロット
そうだった。腰を下ろして向かい合う。
#ジェラルド
「ヤンファとはいつ振りだったか……。最近は私も軍との訓練に出られる機会があまりないから、もう久しく会っていなかったな」
ヤンファ
「そっちの仕事が忙しいでしょうからねェ」
ヤンファ
2,3か月ぶりじゃねえかな、とか言いつつ。
#ジェラルド
「近頃は色々と不穏なことも起き始めている。何処も手が足りない状況だ」
#ジェラルド
「……そんな中での今回の提案、父として嬉しく思う」
ヤンファ
「ふゥん……俺には詳しく解らねえが、シャルなりに考えたって感じか」
シャルロット
「です。二大派閥の揉め事も日々増えているとか」 多分。
#ジェラルド
「……うむ。《ネベール会戦》以降、彼らの対立は激化するばかりで、収束する気配が見えず、マグダレーナ姫殿下も頭を悩ませておられる」

大陸新暦306年 《ネベール会戦》

 2年前に発生した、ネベール砦付近を舞台とした公国軍対蛮族軍の戦いの呼称です。ネベール砦とは、インミスティ北部に建設された公国軍の大拠点で、現在公国の最重要軍事拠点となっている砦を指します。
《蒼き北伐》(後述)以降守勢へ回っていた蛮族軍の反攻として行われた大侵攻であり、霧の街、シェス湖を通じてありとあらゆる種類の蛮族がヴァルクレア城方面より攻めて来ました。これに対し、公国軍はレーゼルドーン大陸に駐在していた者たちを総動員し対処に当たります。しかし、蛮族の数は彼らの想定を遙かに上回っており、本土への支援とルキスラ帝国軍の協力を要請します。しかし、当時ルキスラは不穏な動きを見せ始めていたドゥラージュの軍勢の対処に当たっており、満足に出兵することはできませんでした。
 その為、やむを得ずダーレスブルグ公国中央軍が本国より派遣され、公王であるアルフレートⅢ世がそれを率いました。《蒼き北伐》の際、オトフリート・イエイツという稀代の英雄を失った公国軍には、かつてオトフリートと同様に武門として知られ、また戦術家として名を馳せたアルフレートⅢ世を除いて、それだけの蛮族の大群に対抗することは出来なかったのです。
 かくして、公国軍と蛮族軍は共にネベールに大軍を展開、公国史上稀に見る大規模な陸上戦が繰り広げられました。アルフレートⅢ世は、守りの剣〈ファランダレス〉を用いた作戦を使い、また自身がそれを振るう事によって蛮族軍の将を見事討ち取り勝利を収めました。
 しかし、その戦いでアルフレートⅢ世の負った傷も大きかったのか、《ネベール会戦》の後アルフレート三世は枯れ木のようにやせ細り、驚くほど無気力になり、ついには“剣の折れた剣豪”と揶揄されるまでになってしまいます。王がそのような状況に陥った為、ダーレスブルグにおいて「保守派」と「開放派」の対立が表面化し、現在でも留まる事を知らず激化し続けています。
ヤンファ
「公王のおっさんも、相変わらずあの様子なんだろォ?」
#ジェラルド
「ああ、公王陛下も相変わらず復調の兆しすら見えない」
#ジェラルド
「さて……今日私がお前たち二人を此処へ呼んだのは他でもない。お前たちの冒険者活動開始にあたって、話しておくべきことがあったからだ」
シャルロット
「あ、はい。なんでしょう、お父様」 色々言い出しかけたことを飲み込んで
ヤンファ
「どうなってんのやらねェ……で、話でしたね」
#ジェラルド
「お前たちの冒険者活動について、過剰に介入する気は無論ない。……とはいえ、お前がどのような存在であるかは言うまでもない。故に、いくつかこちらからバックアップをさせてもらおう、ということになった」
シャルロット
「と、いいますと?」 小首をかしげ、続く言葉を待つ
ヤンファ
「監視の増強か?」
#ジェラルド
「いや、監視などという無粋なことをするつもりはない」
ヤンファ
「まァわざわざ護衛つけてんだからそうだよな」 
#ジェラルド
「冒険者としてのノウハウは、ヤンファも持っているだろうし、な」 騎士なのにな、と付け加えたそうな顔。咎めるような口調ではないが
ヤンファ
「いやァ」 はは……と目を逸らす
シャルロット
「……そうだったのですか!?」 驚いた顔でいう。騎士なのにすげェ! と
#ジェラルド
「……ああ、シャルロットは知らないのだったか」 ヤンファの冒険者活動。
シャルロット
「秘められたヤンファの才能にですか?」 そんなじじつが
ヤンファ
「お前、俺が適当な理由つけて抜けだしてんのマジで信じてたのか……」
ヤンファ
「ぁっ」 言うべき人じゃないところで言っちまった
シャルロット
「……」 (''
ヤンファ
「コホン」
シャルロット
「後でフェリシア様に通信しないといけません」
ヤンファ
「手遅れ手遅れ」 <通信  「で、続きですね」
#ジェラルド
「やれやれ……お前を見ているとやはりフーロンを思い出してしまうな」 苦笑しつつ。 「シャルロットの素直な所は美点でもあり欠点でもあるな……」 お父さん心配です
#ジェラルド
「話を戻そう」
#ジェラルド
「昨今、ダーレスブルグでは二大派閥の問題やエイギア地方の蛮族の活発化などで、冒険者の需要が増大してきている」
#ジェラルド
「それに伴う解放移民の受け入れ等で様々な物資がインフレーションを起こしているのも、知っての通りだろう」
#ジェラルド
「そんな冒険者需要の増加に伴って、不当に暴利を貪る冒険者の店も増えて来ている」
#ジェラルド
「国内の情勢の不安定さも、さっきヤンファも言ったような公王陛下の事情もあり、それらに拍車を掛けることとなっている」
#ジェラルド
「そうした事情からも公国は今不安定な状況にある。その中で冒険者として活動するのは生半可なことではないが、どうか諦めずに、自身の糧となるものを掴めるまで頑張って欲しい」
#ジェラルド
「そしてその中で……出来れば信頼のおける者を一人でも多く見つけてくれ。そうすれば、お前たち二人はもっと強くなれるだろう。……あらゆる意味で、どんな状況にも屈さずに抗えることが出来るように、な」
シャルロット
「はい、お父様! 必ずや確かなものを得て帰ってまいります」 ぐぐ、と拳を握りしめて。
ヤンファ
「強く、ねェ」 親父の顔を思い出しつつ
#ジェラルド
「ああ、お前たちにならそれが出来ると信じている」
ヤンファ
「………」 空回りしねえか不安だわ、って目でシャルの勢いを眺める
ヤンファ
「しっかし、不当な冒険者の店ねえ……そういや、あったわ。ウチの請けた仕事をいちゃもんつけて『こっちの仕事だ』とか言ってた奴らとか」
#ジェラルド
「本来冒険者ギルドが出すべき資金を提供せずに、依頼主たちから搾取する、などと言った不正も日常茶飯事だ」
シャルロット
「黙ってそのようなことを見過ごすわけには参りませんね!」 ふんすふんす
#ジェラルド
「お前たちとは別に、そのような不正を働く店舗は摘発出来るようにこちらも目を光らせておこう」
ヤンファ
「ま、ウチの店ならその点ちゃっかりしてるから安心していいな」
#ジェラルド
「そうだな。店舗には悩んだのだが、今お前が登録している〈宵の明星亭〉で問題はないだろう」
ヤンファ
「助かります。正直、一人ひとりの力を抑え込める事は可能でも、店規模の圧力は個人じゃ無理だ」
#ジェラルド
「元々、それは公僕の役割でもある。お前一人で為そうとすることでもない」 あれ、君公僕だよね、ヤンファ
シャルロット
「既に登録まで済ませているなんて、ヤンファさん流石です」
ヤンファ
「いや、前々からやってるって……」
シャルロット
「………!?」 なんだって! 文字に出来ない衝撃の顔
ヤンファ
「………」 手を額に当てて大丈夫かよ、って顔
シャルロット
「ね、ねつなどありません」
#ジェラルド
「……冒険者活動の中で、適度に人を疑うことを覚えた方がいいかも知れないな」
ヤンファ
「ま、そういう意味でも良い世間勉強になるかもしれねえ、こいつには」
ヤンファ
「そしたら俺の負担もちっとは……」
#ジェラルド
「……そうだな。私の責任も大いにあるだろうが、シャルロットは少々箱入り過ぎる面がある。それを上手く解消出来れば良いのだが」
シャルロット
「私は箱になど入っていませんが?」 小首をかしげ
ヤンファ
「ちょっと黙ってろ」 キリがねえ
#ジェラルド
「…………」
シャルロット
「ちょっと酷いのではありませんか!?」
ヤンファ
「はあァー……」 盛大な溜息
#ジェラルド
「……一度姫殿下に謝罪を申し上げなければならないだろうか」
ヤンファ
「俺にも慰労ねえの……?」
#ジェラルド
「お前は普段好きに自身を労っているだろう」
ヤンファ
「す、すみません……」 素直に謝った
#ジェラルド
「……まぁ良い。これもシャルロットの美点だ」 娘かわいいからいいんだ。
シャルロット
「何故二人そろって肩を落とされているんです! これから始まるんですから、力いっぱい、元気良くいかないといけません!」 うぉー
ヤンファ
「あァはいはい、後で聴くから今は親父さんの話聞こうな」
シャルロット
「はぃ……」 縮まる
#ジェラルド
「シャルロット、もう日も落ちている。もう少し声量を抑えなさい」 しー。
シャルロット
「申し訳ありません……」 ミニマム
#ジェラルド
「〈宵の明星亭〉を勧めるのは姫殿下と相談した結果でもあるのだが、その理由を語ろう」
ヤンファ
「あァ、聞いてなかったな」
#ジェラルド
「まずは理由のひとつめ」
#ジェラルド
「店主であるギル・ケンドールの人柄だ。ヤンファは彼の事をそれなりに知っているだろう」
#ジェラルド
「彼は元公国軍人で私も幾度と無く面識があるが、非常に面倒見の良い人物でな。新しい宿ながら店の評判も上々だ」
ヤンファ
「ン、そうだな。あの人なら偶に一緒に酒飲みもする」
#ジェラルド
「お前たち二人が冒険者活動を始めるのならばしっかりとサポートしてくれるだろう。……無論、彼にもお前たちの身分は伏せておくこと。尤も、フーロンと彼は知己だったからヤンファの事は知っているかも知れんが……まぁいいだろう」
ヤンファ
「気を回してくれてるみたいで助かってるんですがね」
シャルロット
「判りました、身分を伏せます」 判ってない顔
#ジェラルド
「この点が一番心配なのだが……まぁザイア神殿に勤めていた私の娘という程度ならば周囲に知れても問題はない」 はずだ。
#ジェラルド
「ヤンファ、しっかり頼むぞ」 シャルロットの様子を見て。
ヤンファ
「問題は、地位とかが割れた時、か」
ヤンファ
「まァ、口裏は合わせときます。あとはコイツ次第なんで」
シャルロット
「困ったときは口を閉じて笑顔を浮かべてヤンファを見ます」 万事解決です
ヤンファ
「もう最悪それでも良いわ」
シャルロット
「最悪ではありません、最善手です」
#ジェラルド
「……それが最善とは言わずとも次善策に思えてくるのがなんとも」
#ジェラルド
「早々無いとは思うが、もし問題が生じた場合にはこちらに連絡をよこしてくれれば良い」
ヤンファ
「ま、そうならんように努力します」
#ジェラルド
「……さて、理由のふたつめに移ろう」
ヤンファ
「……はい」 もう疲れてきた
シャルロット
「眼に見えて二人の調子が落ちていきます……」
ヤンファ
「それが何でかが解るようになったらお前を褒めてやるわ」
#ジェラルド
「ふたつめは、仲間の候補だ。先程も言った通り、冒険者活動において仲間は重要だ。流石にお前たち二人だけで活動させる訳にもいかない」
#ジェラルド
 「〈宵の明星亭〉には、エリカ・ケイとソルティアという名前の冒険者が登録しているはずだ。パーティを組むかの決定は実際に会ってから、彼らとお前たちで相談して決めるのはもちろんだが、一度彼らとは話してみておいて欲しい」
シャルロット
「エリカ・ケイ様と、ソルティア様……と」 記憶記憶
ヤンファ
「ン、そいつらが何かウチらに関係あんのか?」
#ジェラルド
「エリカというのは、アロイス・ケイ殿のご息女でな。お前たち二人はあまり知らない人物かも知れないが、アロイス殿は第4軍に所属していた。……残念ながら、《蒼き北伐》の際に行方知れずになってしまったが」

大陸新暦303年 《蒼き北伐》

 5年前、名目上はダーレスブルグ公国の主導によって行われたレーゼルドーン大陸への侵攻作戦の呼び名です。
 呼称に「蒼き」と冠している通り、〈蒼鷲騎士団〉を始めとするルキスラ帝国の大きな助力を受けて実行されました。
 伝説の英雄と呼ばれるオトフリート・イエイツに率いられた公国・帝国連合軍は破竹の勢いでレーゼルドーン大陸へ侵攻し、瞬く間に霧の街とハーゼとの中間地点にあたるインミスティを解放し、人族の拠点として作り替えました。
 連合軍はその後も北進を続けようとするものの、霧の街以北の守りは堅く、その後はオトフリートを中心とする少数精鋭の調査隊が送られるのみとなります。しかし、「間もなく竜槍山脈を突破し、ヴァルクレア城の近辺に達する」との報告を最後に、調査隊との連絡は途絶えてしまいました。
 その後、インミスティ付近で調査隊の一部の隊員とオトフリートの遺体が発見されます。竜槍山脈まで行ったのは連絡があったことからも確かでしょうが、そこで何が起こったのかは未だに知れていません。
 しかし、レーゼルドーン攻略の新たな拠点であるインミスティを解放した功績は大きく、《蒼き北伐》はダーレスブルグ、ルキスラ両国で高く評価されています。戦いの後、両国民たちは、特に戦いの最中目覚しい活躍を見せていたオトフリート・イエイツと〈蒼鷲騎士団〉を英雄視し、それを派遣したユリウス・クラウゼに対しても同様の目を向けることになります。
 また、ユリウスはオトフリートの英雄的な行動に関してダーレスブルグ国民に対し真情あふれる演説を行なっており、それが公国民たちの心を打ち、《蒼き北伐》以降ダーレスブルグ内でのユリウスへの信頼はかなりのものとなっています。
ヤンファ
「第四軍ってーと、あのお姉さんのか」
シャルロット
「お姉様のですか?」 PLの記憶が危うい
#ジェラルド
「アロイス殿は決して傑物ではなかったが、優しい人物だった。彼のことはよく覚えている。姫殿下を交えて、時折話をする機会があったが、人柄が滲み出る会話に心が安らぐようだった」
ヤンファ
「へェ」 このおっさんが言うなら確かなんだろうな
#ジェラルド
「うむ。現在は姫殿下が統括されている第四軍だ。当時はオトフリート様が将軍に就いていらしたが」 当時マグダレーナは14歳なので
ヤンファ
「あァ、そりゃそうか」 北伐の時だもんな
#ジェラルド
「アロイス殿の話はその殆どが家族自慢でな。早くに妻を失った身としては羨ましくもあった。……彼は本当に家族を大切に思っていたのだろうと、ひしひしと感じさせられたよ」
シャルロット
「まるで無関係、というわけでも……無い方なのですね」
ヤンファ
「で、その家族の一人がエリカって女なワケだ」
#ジェラルド
「ああ、これも何かの縁なのかも知れないな」
#ジェラルド
「そうだ。彼女が幼い頃に数度顔を見たことがある程度だから、彼女は私のことなど覚えていないだろうが……アロイス殿のご息女だ。きっとお前たちと打ち解けられるだろう」
シャルロット
「家族、ですか」 色々思うところもある。微妙に複雑な笑みを浮かべてうなずいた。
ヤンファ
「親父さんがそう言うぐらいなら、丁重に持て成すとするか」 多分
#ジェラルド
「そしてもう一人が、ソルティアという青年だ」
#ジェラルド
「彼は8年程前に公国へとやってきて、その後しばらく公国軍に所属していた」
ヤンファ
「ん、ソルティア……?」
ヤンファ
どっかで聴いたような、って顔をする
シャルロット
「8年……?」 結構年上なのだろうか。
#ジェラルド
「一年程前に退役してしまったが、その後は冒険者として活動していると聞く」
#ジェラルド
「こちらも殆ど話したことはないのだが、何処か印象深かった青年であったのは覚えている」
シャルロット
「そうですか……早速お会いしてみたいですね」
#ジェラルド
「ヤンファは聞いたことがあっても不思議ではないだろう。同じ店に在籍しているのだからな」
ヤンファ
「あ!」 思い出した  「あの優男っぽい奴か」
#ジェラルド
「うむ。軍に居た時の記録を拝見したが、腕は確かなようだ。冒険者の先達として、声を掛けてみるのはお前たちにとって悪くない選択肢だろう」
ヤンファ
「いや、2回ほど一緒に仕事もしたことあんぞ。確かに軍人らしい嗅覚と剣術を使ってたわ」
#ジェラルド
「ならば話は早いな」
ヤンファ
「あァ。それならこっちからも声をかけやすい」
シャルロット
「……ムムム。二人で分かり合った風のお話しぶりです」
#ジェラルド
「何、彼に会えばお前にもすぐに分かることだろう」
#ジェラルド
「理由は以上だ。次は……支給品についてだな」
ヤンファ
「そうだなァ。むしろお前はちゃんと身を伏せないとすぐバレんぞ、あの嗅覚なら」
#ジェラルド
「二人は、自立可動式戦闘支援システムというものを聞いたことはあるだろうか」
シャルロット
「わたし、匂いますか……? お風呂はきちんと入ってますが」
ヤンファ
「……いや、もういい。何でもないわ」 そういう意味じゃない
#ジェラルド
「……」 眉間を指で揉んだ
ヤンファ
「で、自立可動式…?」
シャルロット
「いえ、私はそのような……何なのでしょう?」
#ジェラルド
「自立可動式戦闘支援システム。ルキスラにて近年開発が進んでいる戦闘支援の魔動機だ」
ヤンファ
「戦闘支援、人によるものじゃなく、魔動機そのものによる支援か」
#ジェラルド
「あくまで、使用者の潜在能力を引き出す為のものだがな」
シャルロット
「聞くからにすごそうですが……すごいのですか?」
#ジェラルド
「既に私や姫殿下も使用しているのだが、それをお前たちとパーティを組む者たちに支給しよう、という話だ」
#ジェラルド
「凄いのだ」 シャルロットにはきっとこう言っておけばよい
シャルロット
「凄いのですか!」 わぁ! と判りやすく盛り上がる
ヤンファ
「流石親父……」
#ジェラルド
「お前たちが登録した後、〈宵の明星亭〉の店主ギル殿から手渡されるように、こちらで手配しておく。お前たちはそれが支給されることだけを把握しておいてくれれば良い」
ヤンファ
「しっかし気前が良いな。そうそう手に入るモンでもねえだろ」 値段が高そうなのは言うまでもない
#ジェラルド
「少々やり過ぎかと思わんではないのだが、私も姫殿下も正直気が気でないからな……」 だってシャルロットこれだぜ
ヤンファ
「まァな……」 これだしな
シャルロット
「今度は二人が哀れんだ眼です……」
シャルロット
「しかしながら、それは受け取ったその日に使えるような物なのですか? ……ま、魔動機の言葉はわからないのですが」
ヤンファ
「説明書は俺が読んでやるからとりあえずその場で理解しとけ」
#ジェラルド
「大丈夫だ。魔動機とはいえ、現代人に向けて調整されている。私も魔動機文明には明るくないが、問題なく扱えているよ」
ヤンファ
「ン、親父さんも持ってんのか」
#ジェラルド
「うむ。私が所持しているのはテストバージョンのようなものだが、機能としては今出回っている者と大差はないらしい」
シャルロット
「通信機みたいなものですか。でしたら問題ありません!」
#ジェラルド
「その延長上と思っておいて問題ない」 きっとな……
ヤンファ
「ま、了解した」
シャルロット
シャルロットの脳内では、後ろから応援してくれるうさぎとかが描かれています。
#ジェラルド
「私から話しておくのはそのくらい、だな。何か質問があれば受けるけるが、何かあるかね?」
シャルロット
「はい、わかりましたお父様。問題ありません」
ヤンファ
「ン……冒険者での活動報告はどれぐらいの頻度がいいんですかね」
ヤンファ
「そう毎日仕事がある訳でもねえだろうし」
#ジェラルド
「お前たちが必要だ、と思ったタイミングで良い。その辺りの裁量はお前たちに任せる」
ヤンファ
「了解。こっちもそんなモンか」 
#ジェラルド
「……と、いかん。大事なことを忘れていた」
ヤンファ
「ン?」
#ジェラルド
一言断りを入れてから、立ち上がって部屋の奥の厳重そうな容れ物から布に包まれた何かを取り出した
シャルロット
「お父様?」 なんですかそれは
#ジェラルド
そしてテーブルの上にそれをゆっくりと置く
#ジェラルド
「開いてみなさい」 シャルロットに布を取るよう促した
シャルロット
「わかりました」 おそるおそる、布を丁寧に剥ぎ取って全容をあらわにする
ヤンファ
「でけェな。盾か?」
#ジェラルド
中から現れたのは、ヤンファの読み通り巨大な盾だ
#ジェラルド
白を基調とした巨大な盾は、一目で騎士神ザイアに連なるものであることが理解出来る
#ジェラルド
「それは〈リベリオン〉。途上のザイアの神官戦士を鍛える為に作られた盾であり、また剣でもある」
シャルロット
「これは……」 ひょい、と盾を手にして右腕で構える
ヤンファ
「剣でも……?」
#ジェラルド
「扱い方は、今のシャルロットであれば自ずと分かるだろう」
シャルロット
「どういうことですか? ……これは、どう見ても盾ですし……スパイクシールド?」 こう、ガン!って
シャルロット
「う、うーん?」 右手に持った盾をちょこちょこといじり倒した後
シャルロット
こう、かな?」 暫く眺めた後、それがあたかも永年連れ添った相棒かのような仕草で、盾を巨大な一振りの剣へと汲み上げ変える
#ジェラルド
「そういうことだ」 ひとつ大きく頷いた
ヤンファ
……ヒュゥ」 一瞬だけ目を丸くした
シャルロット
「お、おー!」 すぱ、っと両手で構えなおして、その肉厚な剣を正眼に
#ジェラルド
「その盾は魔動技術による変形機構を備えている。矛と盾、相反する2つの性質を持ったそれを上手く操ることが出来れば、お前はその時には騎士神の戦士としてひとつ成長しているだろう」
〈リベリオン-S-〉

基本取引価格:7,000

知名度 13 形状 可変型の剣盾 カテゴリ〈盾〉A
概要 相反する2つの性質を兼ね備える 製作時期魔動機文明○
効果
ランク効果
変形
 この盾を〈リベリオン-B-〉へ変形させることができます。
 この効果は、装備者が主動作を行う前でなければ使用できません。

フィルアップ
 装備者のMPを消費することによって、この盾にMPをストックすることができます。
 盾に蓄積されたMPは魔晶石と同等に利用できます。ストック出来るMPは最大「3」点です。

シールド・エクステンド
 10秒(1ラウンド)の間、盾にストックされたMPを消費し、その消費分だけこの盾の防護点を上昇させます。

非ランク効果
騎士の道
 この盾は騎士神ザイアのプリースト技能を持っているキャラクターでなければ装備できません。
必筋回避防護
備考
1512
〈リベリオン-B-〉

基本取引価格:7,000

知名度 13 形状 可変型の剣盾 カテゴリ〈盾〉A
概要 相反する2つの性質を兼ね備える 製作時期魔動機文明○
効果
ランク効果
変形
 この盾を〈リベリオン-S-〉へ変形させることができます。
 この効果は、装備者が主動作を行う前でなければ使用できません。

フィルアップ
 装備者のMPを消費することによって、この盾にMPをストックすることができます。
 盾に蓄積されたMPは魔晶石と同等に利用できます。ストック出来るMPは最大「3」点です。

ブレイド・エクステンド
 この武器による攻撃では、命中力判定の後に、剣にストックされたMPを消費し、その消費分だけ追加ダメージを上昇させることができます。

非ランク効果
騎士の道
 この盾は騎士神ザイアのプリースト技能を持っているキャラクターでなければ装備できません。
用法必筋命中威力C値追加D
備考
2H 15 0 25 0
由来と逸話
 ダーレスブルグ公国のザイア神殿にて管理されている武具です。
 途上にある神官戦士に、相反する2つの性質を持った武具を扱わせることで、その心身を鍛える目的で手渡されます。
ヤンファ
「気が気でないだけに、こんなモンまで支給したのか」
#ジェラルド
「いや、これは冒険者活動を始めずとも、そろそろシャルロットには渡そうと思っていたものだ」
#ジェラルド
「丁度いい機会故に、此処で与えておこうと、な」
ヤンファ
「成程ねェ」
シャルロット
宣言(コール)機構・Shield(リベリオン・S)移行(シフト)」 大体用途はわかった。あっさりと剣を盾に戻して、ソファの横へ
#ジェラルド
「ひとまずの扱いは問題なさそうだな」
シャルロット
「うん。こっちのほうがスムーズです。これなら、戦闘時にも十分取り回しができますね」 にこにこしながら
#ジェラルド
「有用に扱いなさい」
ヤンファ
「………」 才能は凄いんだよなァ。俺が出来ないのに、親父からもアレを教わって習得してやがるし
ヤンファ
(そんだけ出来るんなら護衛免除になんねーかなァ)
#ジェラルド
「何なら、フェリシア殿に連絡して、お前に別の仕事を与えてもいいが」 ヘリオドール流読心術。
ヤンファ
「……ン、え、ちょ。勘弁してくださいって」
#ジェラルド
「冗談だ」
ヤンファ
「心臓に悪ィ……」
シャルロット
「はい! ありがとうございます、お父様!」 わぁい、わぁい! ぬいぐるみでも無骨な武器でも喜ぶ便利な娘
#ジェラルド
「さて、こちらからはそれで本当に最後だ。わざわざ呼び立てて悪かった」
ヤンファ
「ン、了解」   「あァ……そうだ、シャル」
シャルロット
「えへへ。部屋に帰ったら研ぎをしてあげないと……あ、はい? なんでしょう、ヤンファさん」
ヤンファ
「それだ」 今ヤンファと呼んだことに対して指さし  「今からお前は俺のことを『ジャン』って呼べ」
シャルロット
「………はい?」 Why? という味のある笑顔
ヤンファ
「所謂コードネームだ。偽名とも言うがな」 頭につけてるウィッグをいじりつつ 「冒険者の店じゃそういう名前にしてる」
ヤンファ
そう言って合言葉を唱えると、ヤンファの髪色が白くなった
シャルロット
「こーどねーむ……! 私も同じように名前を変えたほうがいいでしょうか?」
ヤンファ
「いや、お前はそのまんまで良いんじゃねえか」 眼鏡かけつつ
シャルロット
「身分を伏せる。という行為はそういうことなのかと思いましたが」 早速実践するヤンファさんさすがです
ヤンファ
「これが冒険者としてやってる『ジャン』って姿だ。人間違えたり忘れんなよ」
#ジェラルド
「ヤンファはこの地方にしては珍しい名前だからな。その名を聞けば、何処かしらでシャンリークという苗字を連想する者も居るだろう」
ヤンファ
「もっと東の地方だからなァ」
#ジェラルド
「……シャルロットに関しては、むしろそのままの方が安全だ、という危惧もある」
ヤンファ
「変に変装したりしてボロ出しても困るしなァ」
シャルロット
「わかりました、ヤンジャンさん」
ヤンファ
「雑誌じゃねえぞ俺は」
シャルロット
「ジャンさん、ジャンさん」 頭の中で繰り返して 「ばっちりです、ヤンファさん!」 ばっちりじゃない様を見せ付ける
ヤンファ
「部屋であと100回は唱えとけ」 どこがばっちりだ
#ジェラルド
「……」 ジェラルドはもう不動になった。
ヤンファ
「あとはそうだなァ、お前は俺の幼馴染で、冒険者を一緒にやるために俺が手ほどきするってことにするか」
ヤンファ
「で、そのためにお前と一緒にずっと行動をするってことにするか。兄妹じゃ流石に似てねえしな」
シャルロット
「実際手ほどきを受ける側ですし、問題ないかと思われます」
ヤンファ
「俺とお前は幼馴染。俺はジャン。それだけ頭に入れといてくれ」 特に後者な
#ジェラルド
「……下手に兄妹を装っては姫殿下のお怒りを買いかねんしな」
ヤンファ
「あァ、それもあったな……」 あぶね
シャルロット
「お姉様はそのようなことでお怒りにはなられないかと思いますが」 違うのだろうか
#ジェラルド
「さてどうだろう……。少なくとも私にはお伺いする勇気もないが」
ヤンファ
「俺も無理」
シャルロット
「幼馴染、という間柄はどう表現したものでしょう……?」 すごい困った顔だ
ヤンファ
「とりあえず相手のことが良く解ってる。幼いころから一緒にいるからな」
ヤンファ
「ま、それなら一緒にいる理由も作りやすいだろ」
シャルロット
「私はヤンファさんのこと、わからないことばかりです」 真顔で
ヤンファ
「それっぽい振りしときゃいいんだよ」
シャルロット
「それっぽいふりですか……」 高度な試練です
ヤンファ
「そのうちお前もお忍びみたいなのが増えるだろうしな。機転の良さは養って貰った方が親父さんも安心するだろ」
ヤンファ
と言って眼鏡をはずして髪色を戻した
#ジェラルド
「そうだな。これも試練のひとつとして真剣に取り組んでみなさい」
シャルロット
「わ、わかりました、ジャンファさん」
ヤンファ
「…………」 不安だ……
シャルロット
「も、もういっかい! もういっかい言い直せばちゃんといえます!」
シャルロット
そんな叫びが、むなしく部屋を響かせた。

GM
こうして、“影の姫君”シャルロット・ヘリオドールとその護衛“不精の騎士”ヤンファ・シャンリークの二人は新たな道を歩み始めることとなる
GM
彼女と彼女の周囲の人間が世界の変遷の渦中に巻き込まれて行くのは、この時のシャルロットたちには知る由もなかった

オープニングⅢ 「影の姫君」 了