オープニングⅣ「日常-転機の前に-」

オープニングⅣ 「日常-転機の前に-」

GM
エリカとソルティアが冒険者となってからおよそ1年
GM
〈宵の明星亭〉にて、初心冒険者であった君たちも経験を積み、今では一人前に数えられてもおかしくない程度の腕前にはなっている
GM
今ではすっかり日常と化した冒険者生活の一日の朝、君たちはそれぞれの妹を神殿に送り届けてから〈宵の明星亭〉へと向かう予定だった
GM
白亜の建物の前で君たちは偶然にもお互いに出会い、談笑しながらそのまま神殿前までやってきた……というところだ
GM
朝も早い神殿とその近辺の空気は、言い表し難い程の神聖さに包まれている
#モニカ
「……でね、それで姉さんったら……」 モニカとアカシャは君たちより少し前を歩き、会話に華を咲かせている
#アカシャ
「……ふふ、エリカさんったら意外とおっちょこちょいなんですね」
ソルティア
いつものように穏やかな笑みを浮かべながら、談笑する義妹とその友人の後ろをゆっくり歩いている。
エリカ
「ちょっとー、変なコトをアカシャちゃんに教えないのー」 聞き捨てならない発言が聞こえてきたので後ろから釘を刺す。
#モニカ
「だって面白くって……。ほら、少しくらいそういうドジな所がある方が男の子には好感をもたれるって言うし。ね、ソルティアさん?」
#アカシャ
「そうなんですか?」 とその顔がソルティアを向く
ソルティア
「はは、そうだね。 でも、僕も家ではアカシャに散々言われてるからねぇ……」 のほーん、と気楽そうな笑みを浮かべている。
#アカシャ
「私は別にそんな酷いことは言っていないと思いますけど……」
ソルティア
「アカシャはしっかり者だからねぇ」 はは、と笑う兄バカが一人。
#アカシャ
「そんなことを言われると少し照れます……」
エリカ
「モニカ、面白くっても人の失敗を笑いものにするんじゃありません……ていうかなんでソルティアさんに振るのっ」 ぷんすか。
#モニカ
「別に笑った訳じゃないってば。そんなに怒らない怒らない」 と軽口を叩きつつ、神殿の扉の前に立ち、その扉に手を掛けた
エリカ
「はあ、全くもう……」 やれやれ。
ソルティア
「それに、エリカちゃんにはいつも助けられてるからね。 冒険者を始めた時は心配だったけど、もうその必要も無いねぇ」 てくてくがちゃがちゃ
エリカ
「そ、そうですよねえー」
ちなみに、一年の間に七つも年上だという事実を知った為、さんづけで敬語である。
GM
朝一番の礼拝者たちは既に捌けた後であり、礼拝堂には人はまばらだ
GM
そして扉を開けた瞬間から君たちの耳には心を安らがせるような美しい音色が届く
#モニカ
「……あれ。ねぇアカシャ、もしかして」 と、モニカがアカシャに向いて確認するように問う
#アカシャ
「はい、これは多分先生だと思います」 モニカの意図する所をアカシャは理解したようで、彼女に対して頷いて、二人は礼拝堂を進んでいく
ソルティア
「……うん?」 聞こえてくる音色に顔を上げた。
エリカ
「……ん?」 なんだろ、と。
GM
礼拝堂の奥に備えられたパイプオルガンの前に座り、静かに、けれども指先は流れるような仕草でそれを弾いている神官服に身を包んだ女性がいた
GM
黒の神官服と白銀の髪が美しいコントラストをなしている妙齢の女性、エリカとソルティアの二人も見知った人物だ

GM
女性の名はベアトリス・エインズレイ。始祖神の司祭にして、ルキスラ帝国の宰相でもあるという肩書きを持った女性だ
GM
宰相という仕事柄か、ダーレスブルグを訪れることも少なくなく、その際に暇を見ては神殿に顔を出す為、モニカやアカシャとはそれなりに仲が深いらしい
GM
そして君たち二人も、その時に何度か会ったことがある。ソルティアとアカシャに関しては、それ以外にも過去に彼女の世話になっているのだが
ソルティア
「……来ていましたか、ベアトリスさん」 神殿の入り口あたりで小さく呟き。
#ベアトリス
……」 彼女の奏でる音楽に耳を傾けていると、しばらくしてそれが止まる
エリカ
「綺麗な音色……」 思わず演奏に聞き入り。
#ベアトリス
弾き終わると同時に静かに君たちの方を向いて微笑んで立ち上がる
#モニカ
「ベアトリス先生、おはようございます」 彼女に近付いて行き、モニカとアカシャが声を掛ける
ソルティア
「お久しぶりです。 相変わらず、素晴らしい腕前で」 微笑を浮かべて、頭を下げる。
#ベアトリス
「……おや、モニカにアカシャ、それにエリカとソルティアも。おはようございます。良い朝ですね」 君たちに柔和な微笑を持って挨拶する
ソルティア
「はい。 貴女の演奏を聞くことも出来ましたし、尚更です」 微笑んだまま近づいて。
エリカ
ぺこりと会釈して。 「おはようございます、ベアトリスさん。とても素敵な演奏でした」
#ベアトリス
「……ありがとうございます。私の腕などまだまだ未熟ですが、少しでもそう思っていただけたのなら幸いです」
#アカシャ
「驚きました、今日先生がいらっしゃるなんて聞いていなかったのに」
GM
彼女たち二人がベアトリスを「先生」と呼ぶのは、此処の神殿に所属する神官ではなく、臨時で講師を行ったりするからだそうだ
#ベアトリス
「こちらで一寸した会談の予定が入っていまして、昨夜にダーレスブルグ入りしたのです。今回は神殿に立ち寄る時間はないと思っていたのですが……貴方たちの顔も見たかったもので、少々無理を言って予定を変更していただきました」  彼女は少し申し訳なさそうに苦笑して、モニカとアカシャにそう述べた
#ベアトリス
彼女の言う「貴方たち」とは、眼前にいる四人ではなく、この神殿にて神に祈りを捧げている者全てを指しているのだろう。普段からの彼女の敬虔さを見ていれば、それはすぐに分かる
#ベアトリス
「どうせなら、ということで今日も講義を行う時間も作っていただきましたから、貴方たち二人とはまた後でゆっくり話すことが出来るでしょう」
#モニカ
「本当ですか!? 楽しみです。ね、アカシャ」
#アカシャ
「はい、最近はなかなか神殿にはいらっしゃっていませんでしたし……」
ソルティア
「それは……お忙しいところ、ありがとうございます」 ぺこりと頭を下げ。 別に義妹達だけに会いに来たわけではないだろうが。
#ベアトリス
「……エリカとソルティアも、壮健そうで何よりです。冒険者活動は順調ですか?」
エリカ
「はい、上手く行ってます」
ソルティア
「問題なく。エリカちゃんには、いつも助けられていますよ」
#ベアトリス
「そうですか。それは良かった。アカシャもすっかり元気になって……今ではもうシスターとしての風格も出て来ましたね。これもひとえに、ソルティアの努力の賜物でしょう」
ソルティア
「僕としては、本人の努力の賜物だと思いますけどね。 文句をつけるどころか、今では文句を付けられるくらいですよ」 はは、とからかうように笑う。
#アカシャ
「私は文句なんてつけていませんってば。もう……」 意地悪、とでもいいたげに少しだけ頬を膨らませた
#ベアトリス
「モニカから、エリカについて色々と心配になるような話ばかり聞いているものですから、貴女に関しては特に心配していたのですが……この分ならば杞憂だったのでしょうね」 エリカとモニカを見てくすりと笑った
エリカ
「え゛っ」 しんぱいするようなはなしってなに。
#モニカ
「……せ、先生っ、それは駄目ですっ」 口の前に指を当ててしーっのポーズ
エリカ
「……」 じとりとモニカみた。
#モニカ
「……き、聞き間違いじゃないかなぁ」 乾いた笑い 
エリカ
「……ま、まあ。そりゃあ確かに成りたての頃は周りの人に助けられてばっかりだったけど……」
ソルティア
「………」 モニカとエリカの仲の良い様子にくすりと笑い。
#ベアトリス
「……それで良いのです。互いに補い、助けあうことが人の力。助けられた分、今度は何処かで誰かを助けて差し上げれば良い。そうして世界は回って行くのですよ」
ソルティア
「えぇ……肝に銘じておきます。 僕も、ベアトリスさんの力になれるのならいいのですが……」 今までは助けられてばっかりだし
#ベアトリス
「貴方がこうしてアカシャと共に無事な姿を見せてくれること。私にはそれで十分です」
エリカ
「はい、分かってます。今までお世話になった分、頑張ります」
ソルティア
「……ありがとうございます」 少し照れくさそうに、ベアトリスへ笑ってみせる。
#ベアトリス
「ええ、その意気です。貴女の力を頼りにしている者は、きっと貴女が思っている以上に多いものですから」
#ベアトリス
「……しかし、貴方たちが順調に活動出来ているとはいえ、やはり最近の情勢を思うと心配になってしまうのは避けられませんね」
エリカ
「……確かに、近頃色々と耳にしますけど」
#ベアトリス
「……既に貴方たちも聞き及んでいるかも知れませんが、近頃公都では時折行方不明者が発生しているという噂もあります」
ソルティア
「上の方も、騒がしくなってきているようですしね……宿にも、その手の依頼が増えてきていますし」
#ベアトリス
「《ネベール会戦》以後、鳴りを潜めていた蛮族たちも動きを見せ始めているとも聞きます。……今日私が公都に来たのも、対蛮族同盟に関する会談で、なのですが」
#ベアトリス
「……ええ」 エリカとソルティアに頷いて。 「……これは私の思い過ごしかも知れませんが、公都の空気も、僅かですが以前よりも不穏なものを感じてしまいます」
#アカシャ
「……」 それらの話を聞いて、心配そうにソルティアとエリカの方を見た
#ベアトリス
「……と、あまりこのようなことばかりを話して彼女たちを不安にさせてはいけませんね」
ソルティア
「大丈夫だよ、アカシャ。 お義兄ちゃんには頼りになる仲間が大勢いるしね……アカシャこそ、ちゃんと気をつけないといけないよ?」 アカシャの頭にぽんと手を置いて。
#アカシャ
「……はい、エリカさんも居ますもんね」
#アカシャ
「私の方こそ大丈夫です。モニカも居ますし、司祭様たちも良くしてくれていますから」
ソルティア
「こういう情勢だと、兵士を辞めたのを少し後悔しますね……出来るだけ、治安維持に関わる依頼を請けていこうとは思いますけども」 とベアトリスに答えて。
#ベアトリス
「適材適所、軍にも冒険者にも、それぞれにしか出来ない役割があります。あまり難しい事を考えすぎず、己の最善を尽くしていくだけでも十分でしょう」
エリカ
「はい、勿論そのつもりです」
ソルティア
「そうですね、出来る範囲の事をやっていきましょう。 ベアトリスさんも、あまり無理をなされないように……」
#ベアトリス
「ありがとうございます。私はこうしてきちんと休息もいただいていますし、平気ですよ」
ソルティア
「アカシャでしたら、いつでも貸し出しますよ? 存分にもふもふしてってください」 あはは、と冗談めかして。
#アカシャ
「義兄さん、私は動物じゃないんですから……」
#ベアトリス
「……ふふ、では彼女に嫌がられない程度にそうさせてもらうとしましょう」
エリカ
「大丈夫ですよ。事件なりなんなり、そういうのを何とかするのも冒険者の仕事だったりしますし」
エリカ
「ちょっと空気が良くないからって意気消沈してたら、冒険者なんてやってられません」
#ベアトリス
「……然り。確かにその通りかも知れませんね。貴方たちが気丈にそれを解決へ導くことが出来れば、自然と皆の心も安らぐでしょう」
#モニカ
「……うーん、でもそういう時に姉さんたちのことをただ見てるだけ、っていうのもちょっと悔しい感じがする」
#モニカ
「わたしたちがしたのなんて、今まではお守り作りくらいだし……」
エリカ
「それで十分よ。モニカは、勉強なり遊んだり、色々やることあるでしょ? それをやってればいいの」
#モニカ
「勉強はともかく、遊んでるだけじゃ姉さんに申し訳ないよ。ただでさえ姉さんはわたしの為に頑張ってくれてるんだから」
エリカ
「もう、いつも言ってるでしょ、そういうの気にするな、って。家族なんだから、申し訳ないとかそういうの思わない」
#モニカ
「ご、ごめんなさい。……でも、そう言ってくれるのは本当に嬉しいけど、姉さんだって逆の立場なら何かお返ししたい、とは思うでしょ?」
エリカ
「まあ、それはそうかもしれないけど……」 むむ。
#アカシャ
「……んー、それなら、何かまた義兄さんとエリカさんの応援になるようなことをしてみますか? 例えば……お弁当作りとか」 とモニカに提案
#モニカ
「あ、それはいいかも。お弁当くらいならわたしたちでも簡単に用意出来るしね」
ソルティア
「それは嬉しいなぁ。 仕事にも一層やる気が出るよ」
ソルティア
「いつでも依頼があるわけじゃないから、タイミングが合わないかも……いや、今はいつでも依頼があるようなものかな……?」
#アカシャ
「その時はその時で、普通に食べてくれるだけでもいいですし」
ソルティア
「そうだね、宿の食事も割りとかかるし……ギルさんにはちょっと申し訳ないけど」
#モニカ
「その辺りは店主さんに予め話を通しておけば多分問題ないはずです」
ソルティア
「ん、じゃあそうやって伝えておくよ」
#アカシャ
「はい、お願いします」
#ベアトリス
「……折角の二人の提案です。素直に受けて差し上げるのも良いのではありませんか?」
エリカ
「まあ……そうね。お弁当くらいなら」
#モニカ
「よし、じゃあ決定」
ソルティア
「でも二人とも、無理はしないようにね? 僕らの為に何かしてくれるのは嬉しいけど、それでアカシャやモニカちゃんが苦労するようじゃ本末転倒だからね」
#アカシャ
「それはこちらの台詞でもあります、義兄さん」
ソルティア
「僕はお義兄ちゃんなんだからいいんですぅー」 わざとらしくそっぽを向く。
#アカシャ
「……理由になっていません」
エリカ
「ソルティアさんの言う通り。特にモニカは、あんまり身体強くないんだから、気をつけるのよ」
#モニカ
「大丈夫大丈夫、自分の身体のことは自分が一番わかってるよ」
エリカ
「それならよし、と」 うむ。
#ベアトリス
「では、宿舎の厨房と素材を借りて後で作ってしまいましょうか。今ならば私も時間に猶予はありますし、後回しにしてはエリカとソルティアが何処かしら依頼に出てしまう可能性もありますから」
#モニカ
「本当ですか? じゃあついでだから色々と教えて貰っちゃおうか、アカシャ」
#アカシャ
「そうですね。善は急げと言いますし、早速取り掛かりましょうか」
ソルティア
「いいんですか? それじゃあ、アカシャを宜しくお願いします」
エリカ
「……いいんですか? 時間があるっていっても、忙しそうなのに……」
#ベアトリス
「貴方たちの口に合うものが作れるかは分かりませんが……料理などの息抜きは私にとっても有難いものですから」 困ったように笑ってソルティアとエリカに答えた
#ベアトリス
「忙しいからこそ、このような時間を有意義に使いたいのです」
#モニカ
「少なくともわたしたち二人だけで作るよりは美味しいものが出来そう……」
#アカシャ
「ですね……」
ソルティア
「はは、ベアトリスさんの手料理を残すなんてそんなもったいない事。 お代わりだっていけますよ」
#ベアトリス
「その期待に沿えるように誠心誠意努力しましょう」
ソルティア
「アカシャ、ベアトリスさんの迷惑にならないようにするんだよ」 まぁ義妹なら問題ないだろうけどって顔しつつ。
#アカシャ
「心配無用です」
#アカシャ
「それじゃあ行きましょうか、モニカ、先生」
#モニカ
「あ、うん。ええと、誰かに伝えて許可は貰わなきゃ駄目だよね」
#ベアトリス
「……ああ、宿舎の管理者の方へは私から話を通しておきましょう。二人は先に向かっていてください」
#モニカ
「分かりました。じゃあ行こう、アカシャ」
#アカシャ
「はい」 とモニカに手を引かれて。
#モニカ
「姉さん、ソルティアさん、また後で。必ず持っていくからね」
ソルティア
「うん、楽しみにしてるよ」 義妹達にひらひらと手を振って。
エリカ
「あんまりベアトリスさんに迷惑かけないようにね、モニカ」
#モニカ
「大丈夫大丈夫」
#アカシャ
「それじゃあ義兄さん、エリカさん、また後程」
エリカ
「はいはい、それじゃあまた後でね」
GM
そういって、二人は一足先に神殿の横に備えられた宿舎の方へ向かっていく
#ベアトリス
「……相変わらず仲が良いようで、安心しました。どうかいつまでもそのような関係でいられるように」 小さく祈る仕草。
ソルティア
「……全くです」 同じように祈りつつ。 多分主神として信仰してるのはライフォスだろう。
ソルティア
「……さて、それじゃあ僕らも宿へ向かおうか、エリカちゃん」
エリカ
「そうですね。それじゃあ、この辺で失礼します、ベアトリスさん」
#ベアトリス
「ええ、また機会があれば」
#ベアトリス
「貴方たちに神のご加護があらんことを」
ソルティア
「それでは、失礼します」 ベアトリスへぺこりと頭を下げて。
エリカ
「はい。ありがとうございます」 同じようにしつつ。
#ベアトリス
ベアトリスも頭を下げ返して、モニカとアカシャに続いて宿舎の方へと向かっていった
エリカ
ぺこ、と頭下げて。ベアトリスが行ったの見送ったら外に向かおう。
ソルティア
同じようにベアトリスを見送って、エリカの後に続くようにして外へ向かう。
GM
そうして、君たち二人はいつものように妹たちを神殿へ送り届け、〈宵の明星亭〉へと向かう
GM
今日この日、君たちは後に多大な影響を与える出会いを迎えることになる
GM
が、それは今の君たちには想像も付かず、“日常”における些細な変化のひとつでしかないだろう

オープニングⅣ 「日常-転機の前に-」 了