虚ろの輪音

第一部 第四話後 幕間Ⅰ

幕間

GM
ライフォス神殿襲撃事件の犯人捕縛後、君は例の遺跡の調査に協力したり、こうして魔動機術に関する講習を受けていたりと、忙しい日々を送っていた。
GM
気付けばランベルト教授に〈HRユニット〉の調査依頼をしてから、4日程が経過していた。
#フェリシア
ということになります。ここまで、よろしいでしょうか?」 ザイア神殿の一室。普段は信者や神官たちが様々な勉学に勤しむ部屋に、今君は居る。
シャルロット
「はい。今日もありがとうございました」 マギスフィアをおいて、ぺこりと頭を下げる
#フェリシア
教鞭をとっているのはフェリシア。君が頼み込むと、彼女は忙しい身でありながら快く講師を引き受けてくれている。
#フェリシア
「毎度の事ならが、シャルロット様の飲み込みの速さには驚かされるばかりです」 苦笑しつつ、こちらもマギスフィアを置いた。
シャルロット
「いつもすみません。身近に、魔動機術に詳しい方がいないとはいえ、無茶をお願いしてしまって」
シャルロット
「フェリシアさんの教え方がきっと上手いんですよ」 そうにちがいない
#フェリシア
「いえ、魔動機術は私も好きですから、こうして講義をさせていただくことが息抜きになったりもするんです」
#フェリシア
「私などまだまだ……。協会で講師を経験したこともありません」
シャルロット
「そういうものですか?」 やんわりと微笑んでから窓越しに空を見る
#フェリシア
「ええ、どうしても最近は、胃にきりきりと来るような事が多いですから」
#フェリシア
「マグダレーナ様も、各方面への対応に頭を悩まされていらっしゃいます……」
シャルロット
「……冒険に出るようになってから、でしょうか。色んな出来事が起きていますよね」 ヤンファのことはいわないぜ
#フェリシア
「そうですね……時期については、ただの偶然だとは思いますが」
シャルロット
「お姉さまは……お元気ですか?」 あまり、直接は会わないのだけれど。きっと通信もまれにしかしないのだろうし
#フェリシア
「はい、マグダレーナ様は強い御方でいらっしゃいますし、このような状況でも、ご自分に出来る事を見極めて、的確に対処しておいでです」
シャルロット
「それは良かった。あまり良い噂は聞きませんから」 マグダレーナ本人じゃなくて、世の中のほうの噂な
#フェリシア
「シャルロット様の事も、大変心配していらっしゃいましたよ。上手くやっていらっしゃるようです、とご報告申し上げると、胸を撫で下ろされていましたが」 柔らかく微笑んで。
シャルロット
私も、もっといろんなことを知らなければなりません」 窓の外を見上げたまま、物憂げに呟く
#フェリシア
「……色々な事、ですか?」
シャルロット
「知らないことが多くて困っています。それに、向き合う力も足りないです」 困ったようにほほをかいた
#フェリシア
「それは、何もシャルロット様に限った事ではありませんよ」
#フェリシア
「私たちとて、今公都の周辺で起きている異変に関して、あまりに無力で、それを痛感させられています」
#フェリシア
「……オトフリート様やフーロンさんがご存命で、公王陛下も息災でいらっしゃったならば、きっともっと上手く対処されていると思います」
シャルロット
「そうでしょうか……皆、私よりよほど、頑張っているように思うのです」 自分のことは、大した物じゃないんだと。そんなふうにしか思えない。
#フェリシア
「あまりご自分を卑下なさらないでください。シャルロット様は、十分に頑張っていらっしゃいます」
シャルロット
「あまり、自分を褒める気にはなれませんよ、フェリシアさん。……新しく出来た友達にかける言葉もみつからない始末です」 思い出すのは、モニカとエリカのことだ。
シャルロット
「あのお二人のお話は聞かれました?」
#フェリシア
「……ああ、はい。事件の被害者の中に、エリカさんの妹さんの名前がありましたので、その時に」
シャルロット
「……ああいう時、なんて声をかけてあげるべき、なんでしょうか」 ぼんやりと考える
#フェリシア
「シャルロット様らしい、素直な言葉を掛けて差し上げれば良いと申し上げたいのは山々なのですが」
#フェリシア
「人間の感情というのは複雑なものでして……いつでも優しい言葉だけが人の心に響くとは限りません」
シャルロット
「頑張れ? きっと良くなる……? 私には、とても言えませんでした」 指を絡めて視線を落とす
#フェリシア
「……そうですね。それは、正しい判断だと思います」
シャルロット
「そんな言葉が欲しいんじゃない。きっと、ただ救いがそこにあればいい。でも、私にそんなことは出来ないから結局、遠巻きに見守るだけで」
#フェリシア
「シャルロット様……」 心配そうに見つめる。
シャルロット
「……ごめんなさい。答えはきっと、自分にしか出せないものですよね。大丈夫、頑張れます」 うん、と握った拳を見せる。
#フェリシア
「いえ、謝るのはこちらの方です。助言ひとつ……満足に差し上げられないなんて」
シャルロット
「エリカさんも頑張っています。だから、私はいつもどおりの私でいるだけで、今はきっといいんです」 変に気にするような態度は、すぐわかるものだから。
#フェリシア
「そうですね。そのシャルロット様の魅力が、エリカさんにも自然に届くと良いのですが」
シャルロット
「フェリシアさんにも迷惑かけてばかりで、返せない量の恩ばかりです。だから、もっと偉そうにしてくれてもいいんですよ、ヤンファさん相手みたいに?」 後半は、冗談交じりの言葉で笑う
#フェリシア
「い、いえ、とんでもありません。あんな馬鹿と同列に扱うなんて……」
シャルロット
「馬鹿だなんて……世の中の渡り方も詳しいし、剣の適いっこない先輩です」
#フェリシア
「その才能を向けるべき場所へ向けていないのが、私は腹立たしくて仕方ないんです……」 はぁ、とため息をついて。
シャルロット
ヤンファさんで思い出したのですが。真剣な話を一つ、良いでしょうか?」 はっとして、姿勢を僅かに正す
#フェリシア
「そのヤンファも、最近どうにも様子がはい、何でしょうか?」
#フェリシア
こちらも合わせて居住まいを正そう。
シャルロット
「例えばアランさんなんか、ヤンファさんと気心知れた仲といった感じですが……」 ヤンファ繋がりであらんも思い出して
シャルロット
「……”私”のことを、正確に知っているのは……フェリシアさんのご存知の範囲でどれだけいらっしゃいますか?」
#フェリシア
「……シャルロット様のご存知の方々の中であれば、マグダレーナ様、ジェラルド様、ヤンファは勿論として、お気付きのようですから、申し上げてしまいますが、アランもシャルロット様のご身分を知っています」
#フェリシア
「それと、はっきりと申し上げた事は私からはありませんが、ギルさんも気付いて、あるいはご存知なのだと思います」
シャルロット
「……では、バッカス小父様や、あるいは宰相様辺りはどうでしょう」 これは念のための確認、といった感じに。
シャルロット
「あ、と。突然そんなことを言い出しても、一体どうしたのかって思いますよね」 いけないいけない、と、ぺろっと舌を出す
#フェリシア
「……バッカス大使閣下も、ご存知です」 敢えてそこには言及していなかったのだが、シャルロットの様子にそうやって答えた。
#フェリシア
「宰相閣下がどうかについては、申し訳ありませんが私は存じ上げません。……ただ、帝国の中心人物でいらっしゃいますから、何処かしらから情報を入手していても不思議ではないかと思います」
シャルロット
「……そうですか」 思わぬところが知っていた。ややまゆをひそめる
#フェリシア
「……何か思う所がおありなのですか?」
シャルロット
「今まであまり考えないようにしていたのですが……」 と、言葉を続けて
シャルロット
「報告した、ルナティア、という女性の方を覚えていらっしゃいますか?」 因縁深い相手だ。
#フェリシア
「はい。勿論です。元々、我々のような立場の者の中では有名な人物でもありますから」
シャルロット
「彼女と初めて相対したとき、私は少し冷静さを欠いていたので追求するに至らなかったのですが、彼女は言ったんです」
シャルロット
私を、お姫様、と」 飛んで来た重い鎌と、弾かれた剣の手ごたえを思い出して無意識に手を撫で付ける
#フェリシア
「……彼女が、シャルロット様のことを?」
シャルロット
「彼女が暗躍する何かの傘下にいることは明らかです。……で、あれば……私を知っている方が、相手方にいるのは確実ではないでしょうか」
#フェリシア
「……そう、なってしまいますね」
シャルロット
「さらに言えば……私は、上手く餌として使われているという考え方も、あるいは有り得る話です。私は、格好の的でしょう」 いろんな意味で。弱点としても、突き易く脆い部分だ
#フェリシア
「シャルロット様のお立場は、非常に難しいものですからね……」 はっきりとは言わなかったが、言外に肯定した。
シャルロット
「……なんというか、皮肉な話です」 難しい顔をしていたところで、ふっと表情が和らいだ。
#フェリシア
「……シャルロット様が神殿の外に出て活動を始めた途端に、このような事態になってしまったことが、ですか?」
シャルロット
「いえ……それもあるのですが。私は向かっていくべき敵であるはずのルナティアさんから、色々教わってしまいました。振り返ってみれば、なんだかおかしいなって」 ふふっと、思わず笑みをこぼす
#フェリシア
「敵対する立場にある者の言葉を、そこまで素直に受け入れ、ご自分の力となさってしまうのは、流石という他ありませんね」
シャルロット
「向かい合っているときは昂ぶっていて何が何でも戦うぞって思うんですが、今思い返すと憎い相手でもないな、と。……多分、また会ったら暴走してしまいそうではありますが」 ぺろっと、またちいさく舌を出す
シャルロット
止めないでくださいね、フェリシアさん」 ひとしきり笑ってから、表情をやんわりと引き締めて言う。
#フェリシア
「……正直に申し上げれば、引き止めたい気持ちで一杯です」
#フェリシア
「しかし、それではシャルロット様が成長なさる機会を奪ってしまう事に繋がりますし、こうして、マグダレーナ様とジェラルド様が貴女を世に送り出した意味もなくなってしまいます」
#フェリシア
「だから、私からはシャルロット様のご無事を祈るだけに留めておきます。……代わりに、ヤンファには強く言っておきましょう」
シャルロット
「成長だとか、世に送り出した意味だとか、難しい言葉にしなくてもいいですよ? 単に、箱入り娘が外で遊ぶことを覚えたぐらいに思ってもらっても」 強い意志で、そんな言葉を返す
#フェリシア
「その言葉は、お二人に取っておいて差し上げましょう。私は貴女やマグダレーナ様を守護する立場ではありますが、保護者であるのは、あのお二方でしょう」
シャルロット
「どうでしょう。……ヤンファさんも、何かに悩まれてるみたいですし。自分のことは自分で頑張りますよ?」 うむ、うむ
#フェリシア
「ヤンファは、今まで放蕩していたツケが回って来たんでしょう。……ほんの少しだけ心配ではありますが」
シャルロット
「ヤンファさんに関しても、私が語れる言葉が無いのが……辛いところです」 多分なんであれ私には言われたくないだろう。多分。
シャルロット
「もっと馬鹿だったら良かったんですよね」 何だかんだで、他人の顔色をきにするのは育ちのせいか。
#フェリシア
「……それは私に関しても同じですね。ああいうヤンファは、今まで殆ど見たことありませんし、どう声を掛けたらいいものか……」
#フェリシア
「あまり人目を気にし過ぎないというのも、それはそれで、駄目なものです」
シャルロット
「体当たりのほうが、傷が多くとも得られるものがあるらしいですよ?」 と、本で読んだ
シャルロット
「最近仲の良さそうな、エリカさんやアランさんにお願いするのもいいんでしょうけれど……」 エリカはむずかしいかなー、という微妙な顔で。
#フェリシア
「それは状況と人によりけりではないでしょうか。私などは、そのやり方では上手く出来そうにありません」
#フェリシア
「エリカさんはご自分の事で精一杯でしょうし、アランにもまともなアドバイスなんて期待できるかどうか……」
シャルロット
「話すだけでも楽になるものです。現に、私が今気持ちが楽になりました」 色々はなしたから
#フェリシア
「そうであれば幸いです。……エリカさんやヤンファに関しても、話を聞くだけで、少しでも楽になってくれればいいんですけどね」
シャルロット
「そうですね……とと。遅くまですみません」 なんだか月が高いところまでいってるわ
#フェリシア
「いえ、お気になさらず。シャルロット様とお話させていただいている間は、私も心が和らぎますし」
シャルロット
「そういっていただければ助かります。……無責任なお願いですが、バックアップ、期待してますね」 後方支援やら情報なんか、フェリシアじゃないとたのめへん 
#フェリシア
「お任せください。それが私の職務です」
シャルロット
「はい。……頑張りましょう、フェリシアさん」 微笑んで頷いた。

幕間 了