虚ろの輪音

第一部 第一話後 幕間

幕間

シャルロット
ここは商業区。特に武具の取り扱い店が固まっている区域である
シャルロット
そんな場所での昼下がりの出来事。ということかな
ソルティア
と言う事で。
シャルロット
私は偶然防具店の前でショーケースを眺めているソルティアを見つけるのだ。
ソルティア
「んー……」 割と大きい収入が入ったので鎧の購入までかなり近くなったので、行きつけの防具店へ現在の鎧の修復ついでに鎧の物色に来ているのだ。
ソルティア
鎧は現在修復に出しているところなので、珍しくラフな私服だ。
シャルロット
「……?」 今日はお小遣い≠報酬が手に入ったので、何か無いかと街に繰り出しているところであった。
シャルロット
冒険者になってからお父様の許可が降り易くなったのだ! ひゃっほうということでこちらも私服姿である
ソルティア
「やっぱりまだ高いですね……変に妥協するよりは、もうちょっと待ったほうが……」 ぶつぶつ
シャルロット
「……あの後姿は」 ソルティアらしき人影を見かけて、取る行動は一つ。
シャルロット
「(ピッピッ)」 さきの依頼で入手した通信機の番号(ソルティア)にコール開始
シャルロット
「もしもし
ソルティア
「……ん?」 何か通信機に呼び出されてるので、ポケットから取り出して通話を開始。 「はい?」
ソルティア
「あぁ、シャルロットさんですか。 こんにちは」 とのんびり挨拶。
シャルロット
「あたりです! ソルティアさん、今あなたの後ろに居ます!」 ずびし、と通信機を取ったことで断定したのか、勢い良く指をさして叫ぶ
ソルティア
「………」 くるっと振り返った。
シャルロット
貴方の背後にはものすごい笑顔でニコニコしている金髪の少女が
シャルロット
「奇遇ですね、ソルティアさん!」 通信機を片付けつつ
ソルティア
「……姿が見えているのに通信機をかけるのは、若い子達の流行なんですか……?」 訝しげな顔をしつつ通信を切る(ブチッ
シャルロット
「いえ、鎧を脱いでいらっしゃったので、ソルティアさんか少しばかり自信が無く」 鳴らした電話を取ったらそのひとだ。 「お買い物ですか?」
ソルティア
「えぇと……買い物と言うより、下見ですかね。 鎧の修復ついでなんですが」 防具屋の看板を見上げて。
シャルロット
「鎧の手入れは大切ですね……しかしながら、修繕といわず修復とまで仰るのであれば、かなりくたびれてしまっているのでは?」
ソルティア
「もう長く使ってますからね。 依頼のランクも上げようとしていますし、新しい鎧を買おうとは思っているんですが……」
シャルロット
「身につけられていたのは確かチェインメイルでしたか……んー、ソルティアさんの力ならもっと重たくて質の良いものも大丈夫そうですよね」
ソルティア
「えぇ、まぁ。 筋力的にはともかく、扱いづらい鎧を使う技術は取得していますね」 上手く硬いところで受け止める技術だ。
シャルロット
「でしたら! お金も手にされたことですし、新調しましょう。ザイア神殿は推奨された良い武具店を知っています!」
ソルティア
「……そ、そうですね?」 話の流れについていけず笑顔で誤魔化す24歳。
シャルロット
「ええ! では参りましょう。こちらよりも私の顔見知りの方が開かれているお店がありますから!」
ソルティア
「あぁ、そうなんですか……え、今からですか?」
シャルロット
「善は急げと申します! さ、まいりましょう」 ソルティアの手をとってぐいぐい
ソルティア
「え? いやその」 抗弁する間もなく引っ張られていった。
シャルロット
ずんずんと歩いて進みまくる。そう距離はない。すぐにお店に到着して扉を開く
ソルティア
「えっと……」 狙ってる鎧はあるんだが今は買えるお金が無い、と非情に言い出しづらい状況。
シャルロット
「こんにちは! おひさしぶりです、鎧を買いにきました!」 顔見知りのおっちゃんに挨拶して入店
ソルティア
「あ、いえ、その、すみません、まだ確定では……っとっとと」 店のおっちゃんに挨拶しつつ、なおも引っ張られる。
シャルロット
「いえ。これからの冒険厳しくなるでしょう、体を守るものというのは良いものをそろえるべきです!」
ソルティア
「いえ、それはそうなんですが……」
シャルロット
「さ。ソルティアさんの力と……技量を見るに、この辺でしょうか?」 フルメタルアーマーの陳列棚まで歩いて、足を止める
ソルティア
「えっ」
シャルロット
「そもそも、ソルティアさんの着こなしを見るに、コレまでの戦いで物足りないところがあったように思います」 うむうむ
ソルティア
「いえ、あの、それはいいんですが……」
シャルロット
「……どうされました?」 どうしたのだろう。間違ったのだろうか
ソルティア
「確かにシャルロットさんの見立てはぴったりです。 ですが、先立つものが……と言って分かりますか?」
シャルロット
「お金ですか? 確かに鎧なんかは高額ですし、特にこのあたりは高いですが……そんなに足りませんか?」
ソルティア
「そんなに、と言うほどではありませんが、足りないのは確かです。 なので、次に依頼を請けた報酬で、と思ってまして」
シャルロット
「ですが次、何があるとも知れません。鎧は購入できるのであればするべきですよし」 一つうなずくと、自分のポーチからお財布を取り出す。
ソルティア
「シャルロットさんのおっしゃる通り、ここは中々質のいい防具が揃ってますしね……目処が立てばここに来よう、ってあのシャルロットさん……?」
シャルロット
「次の依頼を請けたらと仰るのであれば、私のお金を足せば確実に足りますよね」 うんうん
ソルティア
「えっ」
シャルロット
「おじさまー! この辺り試着させてもらいますねー!」     \「アイヨー」/
ソルティア
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいシャルロットさん」
シャルロット
「ほぇ? 何か」 とりあえず背丈に見合う鎧を一つ取り出しつつ
ソルティア
「申し出はありがたいですが、シャルロットさんにそんな迷惑をかけるわけには……まだ次の依頼の目処も立っていないわけですし」
シャルロット
「迷惑だなんて。私は甲冑を着ませんので、お金は必要ありませんよ?」
ソルティア
「必要無いからと言ってそんな容易に金銭の貸し借りをするのは、ちょっと……」
シャルロット
「別にお返しいただかなくても……」 お金の使い方はあまり得意ではない。
ソルティア
「いやいやいやそういうわけにはいきませんからね?」
シャルロット
「私はお金の為ではなく、自身の修練のために冒険者の門をたたきました。ですから、お金は必要とされる方に送られるのが相応しいです」 こくこく
ソルティア
「いや、その……」 駄目だ穏便に説得出来る材料が無い、と言うかこの子あほの子だ
ソルティア
「……あー、じゃあこうしましょうか」 しかしこの子はやっぱいいとこの娘さんで間違いなさそうだな、と金銭感覚的に当たりをつけつつ
シャルロット
「さあ! さっそく試着を……はい?」
ソルティア
「ひとまず試着と体格の合わせはしてもらって、また次の依頼を請ける段になったら、その時お金を借りてここへ合わせておいた鎧を引き取りに来る、と言うのはどうでしょう」
シャルロット
「……? そんな回りくどいことをされなくても良いですよ? お持ち帰りされたほうが楽でしょう」 
ソルティア
「確かにそうですけどね、世の中は楽ってだけで判断出来ない事も多いんですよ」
シャルロット
「難しいお話ですね……わかりました。おじさまにはお願いしておきましょう」     \「アイヨー」/
ソルティア
「それに、恐らく世間一般では貴女が思っている以上に金銭と言うのは重要視されているものなんです。 子供にお小遣いをあげる感覚で全ての事が語れるわけではありませんからね……」
シャルロット
「私も誰彼構わずそんなことはしません。ソルティアさんは大事な仲間ですし」
ソルティア
「今から借りる分にしたって、安いとは言えない金額ですからね。 お金はお金でありそれ以上のものではありませんが、時には人の命を左右するほどに重いものなんですよ」
シャルロット
「だからこそ。ソルティアさんは仲間なのですから、その命を守る鎧に尽力するのも仲間の義務だと思うのです」
シャルロット
「ともあれ。さ、試着済ませてみましょう!」
ソルティア
「はは、そうですね……ありがとうございます。 僕も、またシャルロットさんとパーティを組んで依頼を請ける事になると思いますよ……近いうちに、ね」 くす、と小さく笑って。
ソルティア
「ま、今回の提案くらいは妥協してください。 僕も、目処も立たないままほいほいお金を借りるのは心苦しく思いますから……」 と返答しつつ、シャルロットに押されて試着室へGOするのだ
シャルロット
「そうですか? なら、そういうことにしましょう」 ということでぱっぱと試着をさせるのだ。
ソルティア
(僕らに関しては事前に調査があったんだろうけど……こうも素直に人の事を仲間と言いきれるのは、美点でもあり欠点でもありますねぇ……) 心の中で苦笑した。
シャルロット
うん。ばっちりそうですね!」
シャルロット
ソルティアをぱっぱと着せ込んで横で騒いでいる
ソルティア
「えぇ、体格的にもちょうどいいですし、後は簡単な手直しだけでいけそうですね」
シャルロット
「中のベルトとか、内鎧をきちんと用意すればよさそうです。これで、次もばっちりですね!」
ソルティア
「はい。 それじゃあ、今日はその辺りの調整だけ頼んで、戻りましょうか……ありがとうございます、シャルロットさん」
ソルティア
「それとも、まだ買い物がありますか? 何でしたら、今日のお礼にエスコートくらいはしますけども」 少し悪戯っぽく笑い。
シャルロット
「いえいえ! 良い買い物だったと思います」 自分のことのようにニコニコしている
シャルロット
「そうですか? 私は特にほしいものがあって出かけてきたわけではないのですが……せっかくですし、少しお話しながら歩きましょう!」
ソルティア
「そうですね、折角ですし。 では、お供致しましょう」
シャルロット
「普段は、買い物に出るときは大体ヤ……ジャンさんについてきてもらっていたので、不思議な感じです」
シャルロット
防具店からぽこぽこと出て、ぶらっと商業区を歩き回る
ソルティア
「やっぱり、一人では中々出してくれませんか?」 てきとーに防具屋を出て辺りをうろつく。 裏通りには近づかないルートでな!
シャルロット
「お父様が連れて行けと仰るので。不良さんぐらい、一人で送り返せるのに、気にしすぎだと思いません?」 ねー?
ソルティア
「いえ、心配してしすぎる事は無いと思います」 本当にな。 「それに、保護者としてはやっぱり気になるんでしょうねぇ……」
シャルロット
「そうなんでしょうか……私も、しっかり強くなったと思うんですが。ジャンさんには、勝てないでしょうけれど」
ソルティア
「実力の問題では、ゴホン……まぁ保護者なんてそんなものですよ。 僕も、アカシャ……義妹なんですが、一人で出かける時は心配になりますしね」
シャルロット
「妹さんがいらっしゃったんですよね。……治安、少し最近は気になるところではあります」
ソルティア
「最近、行方不明事件なんて噂もよく耳にしますからね……」
シャルロット
「……ソルティアさんは、どうして冒険者に?」 妹が気になるのなら、もっと傍に居られる仕事を選びそうだなと首をかしげ
ソルティア
「………」 一瞬動きを止めて。 誤魔化そうと思ったが、下手な嘘はすぐに見破られそうだ。 「……探してる人がいましてね」
シャルロット
「探している人……? お話をお伺いしても?」 一瞬のためから、何か感じ取りつつ
ソルティア
「余り長くはお話出来ませんがね」 はは、と笑い。 「僕には生まれた時から一緒の……そう、幼馴染ですね。 そんな感じの人がいたんですが……」
ソルティア
「アカシャを引き取る際に、その子と揉めまして。 それ以降、出会う事も無く……」
シャルロット
「幼馴染……でも、どうして」 揉めることなんて無いと思うのに
ソルティア
「……噂はね、よく聞くんです。 ですが、兵士をしていては会えそうも無くて……アカシャも大きくなって手がかからなくなりましたから、探しに行くいい機会だな、と思いまして」
ソルティア
「色々あるんですよ。 僕にも、彼女にも……それを、簡潔に伝える事は、ちょっと出来ませんね」 ふっ、と寂しげな笑みを見せて。
シャルロット
「……初めて、違う顔を見ました」 ソルティアさんの横顔を眺めて呟く
ソルティア
「え?」
シャルロット
「いえ。なんというか、ちゃんと初めてお話ができたかな、と。違ったらすみません」 あはは、とやんわりわらって。
ソルティア
「ふふ……すみませんね。 口が上手い方ではありませんので」 穏やかな笑みを浮かべて。
シャルロット
「ジャンさんなんかは、何かにつけて誤魔化されちゃいますけれど。……そのお話も、いつか力になれたら嬉しいです」
ソルティア
「……ありがとうございます」 にこ、と微笑み。 「実は、僕も誤魔化そうかと思ったんですけどね。 でも、貴女はそういうところは聡そうでしたから。 それに……」
シャルロット
「私はあまり頭は良くないとジャンさんに言われますが……それに?」 小首をかしげる。
ソルティア
「仲間、なんでしょう? それなら、隠し事は少ない方がいいでしょう」 穏やかな笑みを浮かべたまま。
シャルロット
「……はい!」 こくこく、と大きく頷いて笑う。
ソルティア
「ジャンさんは、まだ色々隠している事がありそうですけどね」 ふふ、と意地悪そうに笑い。
シャルロット
「あまり、私と居ることも楽しくなさそうですし……きっと、もっとやりたいことがあるんじゃないでしょうか」 その辺については痛いところだ。苦笑いを浮かべている。
ソルティア
「何、これからですよ。 人は変わるものですから……シャルロットさんが、ジャンさんを良い方向へ変えていけばいいんです」
シャルロット
「……難しい、試練です」 困った顔だ
ソルティア
「試練というのは、難しいからいいんですよ。 僕も、シャルロットさんをお手伝いする事くらいは出来ますし、エリカちゃんもきっと貴女の力になってくれますよ」
シャルロット
「……はい、がんばってみます」 力なく笑って
ソルティア
「おや、いつもの元気はどうしたんですか? そんな様子では、ジャンさんに笑われてしまいますよ」 朗らかに笑って、シャルロットの頭にぽんと手を乗せる。
シャルロット
その通りですね! もっと張り切っていきましょう!」
シャルロット
ぐ、ぐっ、と拳を握り
ソルティア
「えぇ、その意気ですよ」 シャルロットの頭をくしゃっと軽く撫でて、手を離す。
ソルティア
しかし傍目から見ると、16歳の少女の頭を撫でた15歳の少年  
シャルロット
「もっと色々、お話しましょう! 聞きたいこと、いっぱいあるんです」 元気チャージ! とんとんとスキップでさきに進んで振り向く
ソルティア
「はい。 僕で宜しければ、何でもお話しますよ」 いつものように、人の良い笑顔を浮かべて。
シャルロット
「エリカさんのこととか、あまり私は知りませんしソルティアさんでしたらお詳しそうです」
ソルティア
「あんまりプライベートな事は駄目ですよ?」ふふ、とからかうように
シャルロット
「さ、いきましょう。陽が落ちるまで、まだいっぱい時間があります」 というところで
ソルティア
まぁ実際は陽が落ちる前にお家(の方)まで送ってったと思います…… あるいは冒険者の宿まで。
シャルロット
とりあえず今日はこんなところかな
ソルティア
こんなところで!

幕間 了